その139(2019年1月号)
- 冷えに効く漢方薬があると聞いたのですが
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特にこの時期は冷えで悩む方が多く、女性の8割は冷えを自覚されているようです。
漢方の考え方では同じ症状でも原因は人それぞれ異なります。
まずは、かかりつけの医療機関、または、かかりつけ薬局・薬剤師にご相談ください。
冷え症とは
なんらかの原因で自律神経がうまく機能しなくなり、血液の循環が悪くなる状態です。一般に、「通常の人が苦痛を感じない程度の温度環境下において、全身あるいは体の一部に異常な冷えを感じやすいもの」を「冷え症」と呼んでいます。
女性は男性より筋肉量が少ないですから、冷え症になる傾向が強く、女性の8割、男性の3割が冷えに悩まされているようです。また、現代の私たちは、冷飲冷食、夜型の生活、ストレスの増加、ダイエット、運動不足など、冷えやすい生活習慣と環境にあります。
あなたの冷え症度をチェック
- 手足がすぐ冷たくなる
- 手足がしびれることがある
- しもやけやあかぎれができやすい
- 肩が冷えやすく、痛むことがある
- 月経痛がひどい
- トイレが近い
- 風邪をひきやすい
「冷え症」で現れやすい症状を挙げてみました。3つ以上あてはまる方は要注意です。
漢方薬にできること
「冷え症」の具体的症状には、足が冷えてよく眠れない、冷房にあたるとすぐに体調を崩してしまうといったものがあります。一般的にこれらの症状に対して西洋医学では難しいと言われていますが、漢方医学では治療の対象としています。 以前は高齢者、特に50歳以上の女性に多かったのですが、最近は若年でも患者さんが多くなっています。
また、冷え性(冷え体質)は「冷え症」のほかに、月経痛、月経不順、頭痛などを引き起こす原因と言われています。冷え症を治療するということは、冷え性(冷え体質)を改善することなのです。
体のはたらきを良くして、症状を抑えていくことを目的とする漢方治療にとって、まさに熱を作る機能が落ちている冷え症の治療は、得意とするところです。
漢方医による診察
漢方医学には「気・血・水(き・けつ・すい)」という概念があり、冷え症の原因はこれらの異常によって起こると考えられます。具体的には、血が足りない状態(血虚)、血がとどこおっている状態(お血)、水分がたまっている状態(水毒)、気が不足している状態(気虚)などがあります。また、いくつかの状態が重なって冷えが現れたり、悪化したりしている場合も少なくありません。
漢方の診察では、このように独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。月経の状態、日常生活のことなど、冷え症とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、おなかや舌、脈を診たりすることがありますが、いずれも薬を決めるための手がかりになりますので、重要です。(すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
こうした体質や状態、冷えに伴うほかの症状などを考慮して、その人にあった漢方薬が決まります。ただ、冷え症というのは長い間に少しずつ進行してきた症状ですから、短期間で症状が改善されるものではありません。
長い時間をかけて、治療をしていく必要がありますし、漢方薬の服用だけでなく、体が冷えるような生活を改めることも大切です。
冷え症の治療に用いられる漢方薬
冷え症には次に挙げる5つのタイプがあります。各タイプを鑑別して最適な漢方薬を選択することが、冷え治療のポイントになります。タイプ | 特徴 | 代表的な漢方薬 |
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全身型 | 新陳代謝の低下によって熱生産ができないタイプ。 全身の冷えを感じ、胃腸の弱い人に多くみられる。 |
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四肢末端型 | 血液循環が悪く、手足が冷える、月経不順や月経困難症を伴うことが多い。 |
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上熱下寒型 | 上半身はのぼせ、下半身は冷えるタイプ。 顔のほてりや肩こりなどがみられる。 |
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体感異常型 | ストレス、自律神経の失調、心身症・神経症のタイプ。 |
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症候型 | 特徴的な症状がみられるもの |
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暮らしの中の予防法
食事
冷たいアイスやジュース、生野菜、果物などの大量摂取は避け、体を温める食事(生姜、ねぎなど)をバランスよくとりましょう。入浴
寝る前に38~40℃くらいのお湯にゆっくりつかると、手足の血の巡りが良くなります。みぞおちまでつかる半身浴、くるぶしまでをお湯につける足湯もお勧めです。服装
靴下の重ね履きや、毛糸の下着などの工夫で、冷えから身を守りましょう。締め付けの強い下着は、血の巡りを悪くするので避けましょう。運動
血行を良くするウォーキングやストレッチなどの適度な運動を心がけましょう。室温
過剰な冷暖房のもとでは、体温調節機能が狂いがちです。できるだけ、室内と気温との差は5℃程度にしましょう。おわりに
冷え症に関するアンケートで「どのような冷え症対策をしていますか?」という問いに対しては、着衣の工夫、入浴、保温・保湿器具の使用などが主であり、薬で冷え症を改善するという発想はほとんどないようです。漢方薬を上手に用いると、冷え症の治療には有効であることを是非知っておいてほしいと思います。
漢方的に診た原因とタイプは様々ですので、まずは、かかりつけの医療機関、または、かかりつけ薬局・薬剤師にご相談ください。