その141(2019年3月号)
- 腸内フローラを作る薬はありますか?
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腸内フローラとは腸内にある1000兆個以上の細菌の様子をお花畑に例えた言葉です。
腸内フローラを整えることは健康に大きく影響し、それには食事や運動が最も大切ですが、効率のよい方法として整腸剤があります。
腸内フローラとは
私たちの腸内には、1000種1000兆個以上の多種多様な細菌が生息しています。その様子が、まるで植物が群生している「お花畑=英語でflora(フローラ)」のようにみえることから、「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。「腸は第二の脳」といわれるように、腸内フローラを美しく保つことが健康維持に大きく関わっていることがわかってきました。
腸内細菌の分類と効果
腸内フローラの種類や数は食事や生活習慣、人種、年齢などにより異なりますが、細菌は大きく3つに分類され、これらのバランスを「腸内環境」といいます。種類 | 働き | 代表的な菌 | 体への影響 |
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善玉菌 | 悪玉菌の侵入や増殖を防いだり、腸の運動を促したり、有害物質を体外に排出したりと、人の体に有用な働きをする菌 |
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悪玉菌 | 腸内で有害物質を作り出し、お腹の調子を悪くすることもある菌 |
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日和見菌 | 善玉でも悪玉でもなく、優勢な方に味方する菌 |
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味方した菌と同じ影響 |
腸内フローラの理想的なバランスは
健康な人の腸内は、善玉菌が悪玉菌を抑える形で腸内フローラが一定のバランスで維持されています。良いバランスが保たれ腸が健康になると胃腸の調子が整う、便秘改善、ビタミンが合成される、免疫力が上がる、骨が強化される、血液サラサラ、血糖コントロール、血圧コントロールなどに効果があります。病原菌や有害物質を体外に排出することでさまざまな病気が防げます。また幸せホルモンが増えストレスに強くなります。
バランスが崩れて悪玉菌が増えると、有害物質が多く発生します。有害物質は臭いオナラや便秘、軟便の原因になったり、腸管から吸収されて肝臓、心臓、腎臓などに負担を与え、老化を進めたり、がんなどの病気の原因になったりすることがあります。
理想的な腸内フローラ環境は「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」といわれています。このバランスは体調、食事、年齢、ストレス、運動不足、薬の服用などで日々変化します。
加齢による変化もあり、赤ちゃんはビフィズス菌が多いのですが、年齢を重ねていくとウエルシュ菌が増え、ビフィズス菌は減っていきます。
便の形状から腸内フローラバランスを推測することもできますし、検査で確認することもできます(自費)。
健康維持のためにはいつも腸内フローラのバランスを整えておくことが大切です。
腸内フローラのバランスを整えるには
腸内フローラはとてもデリケートなので、直接影響を受ける食事の影響はとても大きなものです。暴飲暴食を避け規則正しく食事を摂ること、アルコールや刺激の強い食品を摂り過ぎないこと、十分な水分を摂ることを心がけましょう。さらに、禁煙を心掛けること、適度な運動をすること、お腹を冷やさないこと、排便リズムを身につけること、ストレスをためないこと、などが大切です。
食事の摂り方は
野菜や果物を多く摂ると善玉菌が増えます。悪玉菌は肉などのタンパク質、脂肪、アルコールの摂りすぎで増えるので気をつけましょう。
腸内フローラを整えるための方法としてプロバイオティクスとプレバイオテクスという言葉が最近使われるようになりました。
プロバイオティクス
生きた善玉菌そのものを食べることをいいます。納豆、ぬか漬・すんき漬け・キムチなどの発酵を利用した漬物、きのこ、麹甘酒、味噌、醤油、酢、削り節、きのこ、ヨーグルト、チーズ、パン、ワインなどの発酵食品を食べることから取り込まれます。
菌種によって効果が少しずつ異なります。善玉菌は胃酸に弱いので、空腹時を避けると効果的です。
善玉菌名 | 特徴 | 働き |
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乳酸菌 クレモリス | カスピ海ヨーグルトの主成分 | 整腸・便秘改善 |
乳酸菌 シロタ株 | 生きて腸まで届く | 整腸・便秘改善 |
乳酸菌 L92 | 良質な乳酸を産生 | からだのバランスを整える |
乳酸菌 LB81 | 腸バリアを高める | 健康な整機能維持 |
乳酸菌 LG21 | 胃酸に強い | 腸の環境を整える |
乳酸菌 PA-3 | プリン体とたたかう | 痛風の危険を減らす |
乳酸菌 R-1 | 免疫機能を活性化 | 感染、アレルギー予防 |
乳酸菌 ガゼリSP株 | 腸に長くとどまる | 内蔵脂肪を減らす |
乳酸菌 ラブレKB290株 | 腸に長くとどまる | 整腸・便秘改善、感染予防 |
ビフィズス菌 BifiX | 腸内で増殖 | 整腸・便秘改善 |
ビフィズス菌 BE80 | 高い生存率で腸にとどく | 整腸・便秘改善 |
ビフィズス菌 BB536 | 免疫機能を活性化 | 感染、アレルギー予防 |
ビフィズス菌 BY株 | 便の水分を調節 | 整腸・便秘改善 |
プレバイオティクス
善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖を一緒に摂ることで、効率良く腸が活性化します。オリゴ糖
自然の甘みを持つ野菜やフルーツに含まれる成分です。糖という名ですが、どちらかというと食物繊維の仲間です。大豆、ヤーコン、キクイモ、ゴボウ、玉ねぎ、バナナ、にんにく、はちみつなどに多く含まれています。
水溶性食物繊維
不溶性繊維は摂りすぎると便が詰まりやすいので注意が必要です。水溶性繊維が多いのは麦、納豆、ごぼう、エシャロット、にんにくなどです。
糖アルコール
お酒のアルコールとは全く別のもので、体に吸収されにくい糖分です。りんご、梨、メロン、にんじん、昆布などに多く含まれます。
サプリメント
食事で腸内フローラを整えるのが一番ですが、現実的には毎日同じリズムでバランスの良い食事を適量摂ることはなかなか困難です。健康維持のためにはサプリメントや市販薬で、より強力で手軽に乳酸菌を摂ることができます。整腸効果はもちろん、免疫力を高める目的もあり、またさまざまな成分が配合されていて、副次的な効果もねらえますし、余分な脂肪分、タンパク成分を摂らずに善玉菌を補うことができます。それぞれのタイプに合わせて選びましょう。
善玉菌を補う医薬品
お腹の不調が改善しない場合はお医師による処方薬で善玉菌を補うこともあります。抗菌剤を飲むことによる腸内フローラの乱れを防ぐための専門の整腸剤もあります。製品名 | 剤型 | 成分 | 特徴 |
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散剤 | フェカリス菌・糖化菌 | 乳酸菌のエサになる糖化菌を含む |
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微粒 錠剤 | ビフィズス菌 | 生きて腸に届くビフィズス菌 |
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散剤 錠剤 | ビフィズス菌・フェカリス菌 | ビフィズス菌と乳酸菌 |
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細粒 錠剤 | 宮入菌 | ピロリ菌除菌による下痢の予防にも |
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散剤 | ビオラクチス | 多量のカゼイ菌を含む |
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散剤 錠剤 | フェカリス菌・酪酸菌・糖化菌 | 2種の菌とエサを含む |
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散剤 錠剤 カプセル | 抗菌剤耐性乳酸菌 | 抗菌剤服用による下痢予防の為に、一緒に飲みます |
最後に
健康維持にはいつも腸内フローラを理想的に保つことが大切です。重要なことは常に善玉菌を摂り続けることです。是非一度、薬剤師に相談してみましょう。