今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その142(2019年4月号)
Q
痛みが続くのですがよい薬はありますか?
A
数年前から、しびれを伴う長引く痛みに効果のあるお薬が出てきました。
しかし3ヶ月を超えて続く慢性疼痛は、心理的・社会的要素など様々な原因が絡み合う事が考えられます。我慢はせずに医療機関への受診を検討してみて下さい。

慢性疼痛とは

一般的には、3ヶ月を超えて持続する痛みを指します。
炎症などによる直接的な侵害受容性疼痛や、ジリジリ、チクチク痛む神経障害性疼痛、また不安や抑うつから生じる心理社会的疼痛などが複雑に絡み合って「長引く痛み」を形成します。

慢性疼痛の分類

  1. 一次性慢性疼痛
  2. がん性慢性疼痛(日本においては直接的ながん性疼痛は除外する)
  3. 術後痛及び外傷後慢性疼痛
  4. 慢性神経障害性疼痛
  5. 慢性頭痛及び口腔顔面痛
  6. 慢性内臓痛
  7. 慢性筋骨格系疼痛

慢性疼痛患者における痛み以外の主な症状・症候

認知・感情的要因

抑うつ・不安・欲求不満・怒り・破局的思考・恐怖

身体的要因

睡眠障害・日常生活活動の低下

社会的要因

社会活動性の低下(休職、休学、失職)・家族関係の変化・経済的ストレス

スピリチュアルな要因

自己価値観の低下、自己効力感の低下

その他

訴訟・医療機関への過度な期待・治療(薬物)への依存

治療方法

薬物療法

後述

インターベンショナル治療

各種ブロック注射など

心理的アプローチ

認知行動療法などの心理教育

リハビリテーション

運動療法や温熱療法などの理学療法

集学的治療

多分野・多職種の専門家で構成されるチーム医療

薬物療法

代表的商品名

  1. NSAIDs:ボルタレン、ブルフェン、ロキソニン、セレコックス等
  2. アセトアミノフェン:カロナール等
  3. ワクシニアウィルス摂取家兎炎症皮膚抽出液:ノイロトロピン
  4. 三環系抗うつ薬:トリプタノール、トフラニール、ノリトレン
  5. 四環系抗うつ薬:ルジオミール
  6. 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):パキシル、レクサプロ、ジェイゾロフト、アナフラニール
  7. セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):サインバルタ、トレドミン、イフェクサーSR
  8. その他の抗うつ薬:リフレックス、デジレル
  9. 抗てんかん薬:リリカ、ガバペン、テグレトール、デパケン、ラミクタール、トピナ
  10. 抗攣縮薬:ギャバロン
  11. 抗不安薬:デパス、リボトリール、ソラナックス、セルシン
  12. オピオイド鎮痛薬:トラマール、トラムセット、ノルスパンテープ、MSコンチン、フェントステープ
  13. 漢方薬:牛車腎気丸、抑肝散、芍薬甘草、ブシ末

薬物療法のトピック

急性疼痛と異なり、慢性化した痛みにはこれまでの消炎鎮痛剤では中々効果が得られず、長らく患者さんを苦しめてきました。
しかしなら、近年慢性疼痛に使用できる薬剤の幅が急速に広がり、順調に効果を上げています。
しびれやビリビリ感などの神経障害性疼痛に使われるリリカの発売を筆頭に、オピオイドや抗うつ薬、抗てんかん薬の慢性疼痛への適応追加が進みました。
また、現在も新しい薬の発売や既存の薬の適応追加などを控えており、今後もこの領域の進展に注目が集まっています。

一方アメリカでは、鎮痛目的で使用されるオピオイドの乱用が数多く発生し、社会的な問題となっています。こういった事態を避けるために、医療従事者も受益者である患者側もしっかりとした薬の適正使用が求められています。

参考サイト