今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その145(2019年7月号)
Q
妊娠に気づかず市販のかぜ薬を服用してしまいました・・・
A
妊娠と気づかずに市販のかぜ薬を服用しても、大きな心配は不要です。
ただし、市販薬の中には赤ちゃんに影響を及ぼす可能性のある成分もありますので、まずはかかりつけの産婦人科医又はかかりつけ薬剤師に相談しましょう。

はじめに

妊娠中(妊娠と気づかない時期も含めて)に飲んだ薬はおなかの赤ちゃんにどのような影響を及ぼすのか、薬局で市販されている薬やビタミン剤は安全なのか等、妊娠中は特に薬に対する疑問や不安を感じる人は多いと思います。
薬を飲んだ後で「おなかの赤ちゃんへの影響は大丈夫かな?」と不安になったり、お母さんが必要な薬を飲むのをやめてしまったりすることがないように正しい知識を身に着けておきましょう。

妊娠中の薬と先天的な赤ちゃんの病気について

先天的な病気を持つ赤ちゃんは、薬を服用していない健康な妊婦さんからでも、約3~5%の割合で産まれます。そして、この先天的な病気の発生原因のうち、薬が原因であるとされる病気は1%未満とされています。もちろん、妊娠中に服用して絶対に安全な薬は存在しませんが、特殊な薬を除いたほとんどの薬は、赤ちゃんへの影響は少ないと考えられています。

妊娠の時期と薬の影響について

薬が赤ちゃんにどのように影響するのかは、薬の服用時期、飲んだ薬の量、薬の種類(赤ちゃんの臓器の形成に悪影響を及ぼしやすいものか、胎盤を通じて赤ちゃんに移行しやすいものかなど)、によって決まります。赤ちゃんの臓器の形成に悪影響を及ぼしやすい薬でも、服用時期によっては赤ちゃんへの影響は少ないと考えられます。一方、服用時期が赤ちゃんの臓器の形成に敏感な時期であれば影響が出る可能性が大きくなります。

妊娠中の市販のかぜ薬や痛み止めの使用について

市販のかぜ薬の中には、「熱を下げる」、「咳を止める」、「鼻水を抑える」などの効果を有する成分が複数含有されているものがあります。その成分の中には、赤ちゃんに影響を与える可能性が報告されている成分もあります。
例えば、解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンは妊娠全般期を通じて比較的安全に妊娠中使用ができますが、アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどは妊娠後期の使用は控えるべきと考えられています。

妊娠中に薬を使用する際には

妊娠がわかってからの薬の使用は、まず、医師や薬剤師に相談することが大切です。妊娠中はお母さんの妊娠時期や薬の性質を考慮して、妊娠中にも安全に使用できる薬が処方されます。そのため、病院を受診する際は、必ず妊娠中であることを伝えるようにしてください。

病気と薬について

持病を持っている方で妊娠を希望される場合は、いつ妊娠しても良いような治療方針(薬剤選択)を主治医と相談していくことが重要です。
妊娠判明後の急な薬剤変更や中止は、お母さんだけではなくおなかの赤ちゃんの健康状態にも影響を与える可能性があります。薬の影響を受けやすい時期でも、薬の内容や量を調節して継続する場合もあります。そのため、妊娠中の薬の使用については、医師、薬剤師に相談してください。

最後に

妊娠中の薬について気になることがあれば、まずは、産婦人科医師、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみましょう。または、妊娠と薬に関する専門機関「妊娠と薬情報センター」に相談して疑問や不安を解消することもできます。
妊娠と薬情報センターでは、妊娠中の薬の使用による赤ちゃんへの影響についての相談および情報集積を行っており、電話や各都道府県にある「妊娠と薬外来」で相談を受けることができます。
長野県では、松本市にあります信州大学医学部附属病院が「妊娠と薬情報センター拠点病院」として指定されており、妊娠と薬に関する専門的な相談が可能です。

専門相談機関


【参考文献】
  • 伊藤 真也ら編 「薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 改定2版」 南山堂
  • 村島 温子著 「飲んで大丈夫?やめて大丈夫? 妊娠・授乳と薬の知識 第2版」 医学書院
  • 林 昌洋監修 「妊娠・授乳とくすりQ&A 第2版」 じほう