今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その148(2019年10月号)
Q
歯の痛みに効くお薬はありますか?
A
歯の痛みに効果のあるお薬は、塗り薬や飲み薬など様々な種類があります。お気軽にかかりつけ薬局の薬剤師にご相談ください。
ただし、痛みの原因は様々ですので、痛みが治まったからと言ってもそのままにせず、かかりつけ歯科医にご相談ください。

歯痛とは

歯痛とは、通常、歯と歯周組織の病変によって生じる痛みを言います。歯痛の原因は様々ありますが、今回は「虫歯」と「歯周病」について説明します。

虫歯について

虫歯とは、口の中の細菌が出す酸によって歯が溶かされた状態のことを言います。「冷たいもの食べるとしみる」「ズキズキ痛む」などの症状が虫歯の特徴の一つです。
虫歯は、細菌(ミュータンス菌)が糖質をもとに作り出す乳酸が歯を溶かすことで生じます。細菌は口の中に残った糖分などを栄養分として歯の表面に付着し、そこで増殖して歯垢(プラーク)を形成します。乳酸がゆっくりと歯の表面のエナメル質を溶かしていき、歯に穴が開いてしまうと、いわゆる「虫歯」の状態になります。
ごく初期の虫歯なら再石灰化によって自然修復することもありますが、歯に穴が開いてしまうと再石灰化等により自然に回復することはできません。虫歯の穴を埋めて修復するなどの治療が必要となります。
急に歯が痛くなったら、痛みが鎮まるまで我慢したり市販薬を服用したりしてとりあえず歯痛を抑えていませんか。しかしこの方法は一時的な対処法でしかありません。一時的に痛みが治まったとしても症状は進行していますので、我慢せずにできるだけ早く歯科医を受診しましょう。

出典:第一三共ヘルスケア「くすりと健康の情報局」

歯周病について

歯が十分に磨けていないと、歯垢(プラーク)が歯と歯茎の間の溝にたまり炎症を引き起こします。歯周病は歯垢が繁殖することで起こります。歯垢を放っておくとやがて石灰化し歯石へと変化します。歯石は歯みがきなどでは取り除けません。さらに歯を支える骨を溶かしてグラグラにさせてしまいます。虫歯と異なり痛みが出ないことの方が多いようです。
歯周病は40歳前後に現れやすく、ストレスや喫煙などの生活習慣や、糖尿病などの病気によって免疫機能が落ちていると、病気は進行しやすくなります。
ちなみに、お酒が悪いわけでは無いですが、飲酒により歯みがきを忘れたり歯みがきが疎かになったりして、結果として歯周病を進行させる可能性があると言われています。お酒はほどほどに。

出典:第一三共ヘルスケア「くすりと健康の情報局」

非ステロイド性抗炎症薬の作用機序

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)は頻用されている抗炎症薬です。NSAIDsは、遊離アラキドン酸からプロスタグランジン(PG)を合成する酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を抑制することにより、抗炎症作用や鎮痛作用を発現します(図1)。COXにはCOX-1、COX-2があり、炎症反応にかかわるのはCOX-2です。COX-1は胃粘液産生、気管支拡張などにかかわる酵素です。
歯科領域の治療には酸性NSAIDsが頻用されています。酸性NSAIDsは多かれ少なかれCOX-2だけでなくCOX-1をも阻害してしまうため、消化管障害を引き起こす副作用があります。また、COXの作用が阻害されることにより、遊離アラキドン酸からのもう1つの経路である5-リポキシゲナーゼの反応が促進され、ロイコトリエンが増加し気管支収縮が生じ、喘息発作を招く危険性があります。NSAIDsを服用する際には、併用薬の確認が必要となりますので、かかりつけ薬剤師にご相談ください。


出典:歯科におけるくすりの使い方 2015-2018

非ステロイド性抗炎症薬の分類

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は酸性、塩基性及び中性に分類されていますが、歯科領域において汎用されているのは酸性NSAIDsです。
酸性NSAIDsは①プロピオン酸系(ロキソニン等)、②アリール酢酸系(ボルタレン等)、③アントラニル酸系(ポンタール等)、オキシカム酸系(ロルカム等)、⑤サリチル酸系(アスピリン等)があります。

ロキソニン
ロキソニンs
ボルタレン
ポンタール
ロルカム
バファリン

出典:歯科におけるくすりの使い方 2015-2018

歯痛以外に他医療機関を受診されお薬を服用されている方は、他のお薬との飲み合わせ等に注意が必要となりますので、かかりつけ薬局の薬剤師にご相談ください。また、かかりつけ歯科医を受診の際には、お薬手帳を提示し併用薬の確認をしてください。

終わりに

歯痛に対し治療は重要ですが、予防や対策について考えることも重要です。
口の中を清潔に保つことが、歯の健康維持には欠かせませんので、しっかりと歯みがきをしましょう。
また、食生活の見直しも重要です。食事の際にはしっかりと咀嚼して唾液の十分な分泌を促すことも、口中の健康維持のためには重要です。唾液の虫歯への抵抗作用は睡眠中に低くなるため、時間を決めずに間食を摂っていると、虫歯が一方的に進行することもあります。就寝前に甘いものを食べることは控え、就寝前の歯みがきを心がけましょう。


【参考】