今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その150(2019年12月号)
Q
血圧の薬はずっと飲まなければいけないのですか?
A
血圧の薬は基本的には飲み続ける必要があります。血圧治療の目的は、脳卒中、心筋梗塞などの予防です。生活習慣を改善しながら、服用を続けてください。
不安なことがありましたら、かかりつけ医、かかりつけ薬剤師にご相談ください。

はじめに

日本人の高血圧の最大の要因は、塩分の摂り過ぎです。若年・中高年の男性では、肥満が原因の高血圧も増えています。過度な飲酒・運動不足も高血圧の原因です。
もちろん年齢を重ねるに従って、多くの人は血圧が高めになっていきます。高血圧は、日本人にとって最大の生活習慣病リスク要因なのです。

高血圧とは

血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が血管の壁を押すときの圧力のことで、心臓が縮んだり広がったりすることで発生します。血圧の値は心臓から押し出される血液量と、血管が収縮して血流が妨げられる血管抵抗、血管の弾力によって決まります。
高血圧とは、血管の中を流れる血液の圧力が強くなり続けている状態です。年をとると一般に血圧が上がりやすくなります。

原因はなに?

高血圧は、原因がはっきりわからない本態性高血圧と原因が明らかな二次性高血圧(ホルモン分泌異常など)に分けられます。
日本人の高血圧の約85~90%が本態性高血圧で、遺伝や食塩の過剰摂取、肥満、過度の飲酒、運動不足、ストレス、喫煙などが原因で発症すると考えられます。

どのような症状がでるのか

高血圧は自覚症状がほとんど現れませんが、長い時間をかけて動脈硬化を進行させます。
症状がないからといって、高血圧を放っておくと、突然脳卒中や心筋梗塞になることがありますし、徐々に腎機能が低下してしまいます。高血圧は、いま症状があるかどうかで判断する病気ではないのです。

どこからが高血圧?

みなさんはご自分の血圧の値を把握されているでしょうか?
高血圧とは、病院や健診施設などで測定した血圧値が、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の状態をいいます。
自宅で測定する家庭血圧では、それより低い135mmHg以上または85mmHg以上が高血圧とされます。
患者さんのなかには、「健康診断では正常血圧だけど、自宅で測ると高い」という方もいらっしゃいますので、自宅での測定もおすすめします。
【参考】日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019

血圧はどこまで下げたらよいの?

降圧目標値は、年齢や合併症によって違います。
家庭血圧の降圧目標値は、若年、中年、前期高齢者(75歳未満)では125/75mmHg未満です。
一方、75歳以上の後期高齢者では、それより高い135/85mmHg未満を目安としています。

高齢になるとさまざまな臓器の機能が低下していることが多く、血圧低下が臓器の機能に悪影響を及ぼす可能性もあるため、慎重に治療する必要があります。
また、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎臓病(CKD)を合併している患者さんの降圧目標値はより低く、125/75mmHg未満とされています。糖尿病やCKDを合併している高血圧患者さんは、心筋梗塞、脳卒中などを発症するリスクが高いため、より血圧を下げ、これらの疾患を予防するため厳格に目標値が設定されています。
【参考】日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019

どんなお薬があるの?

血圧を下げる薬には、大きく分けて血管を広げることで血圧を下げるタイプと、血液の量を減らして血圧を下げるタイプの2タイプがあります。
血管を広げる薬には、カルシウム拮抗薬やARB、ACE阻害薬などがあり、血液の量を減らす薬には、利尿薬があります。一般的に、これらの薬は、血圧の値やほかの病気などを踏まえて2〜3種類併用する場合もあります。

おわりに

軽症の高血圧患者さんでは、生活習慣の改善をしっかり行うことによって、降圧薬の量を減らしたり服用をやめられるケースもあります。一方で、多くの高血圧患者さんでは降圧薬を長期的に飲み続ける必要があります。

患者さんの中には、しばらく服用して血圧が正常値になると高血圧が治ったと勘違いして、薬を飲むのをやめてしまう人がいますが、薬をやめると血圧は元に戻ってしまいます。降圧薬による治療の目的は、高血圧が原因で起こる心筋梗塞や脳卒中などを予防することです。血圧を下げるだけが目的ではありません。血圧を下げるのは、脳や心臓、腎臓などの大切な臓器を守るのが本当の目的なのです。

薬の副作用を心配される患者さんもいらっしゃいますが、頻度が少ないとはいえ、副作用がでる可能性があるのは事実です。降圧薬の服用を開始して、それまでになかった症状がでたら、まずは薬の服用をやめてかかりつけ医かかかりつけ薬剤師に相談してください。