今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その151(2020年1月号)
Q
カゼに抗生物質は効きますか?
A
一般的に“カゼ”と呼ばれる感染症は、ウイルスが原因の大半を占めています。このカゼのウイルス自体に抗生物質は効果がありません。
しかし、“カゼ”の中でも抗生物質が必要なケースもまれにあります。自己判断はせず、まずはかかりつけ医・かかりつけ薬剤師にご相談ください。

そもそも抗生物質ってなに?

細菌を壊したり増殖を阻止する事により、細菌由来の感染症を治療するとても大事なお薬です。
厳密には微生物が作り出したもののみを「抗生物質、抗生剤」と言いますが、抗菌薬や抗微生物薬も臨床的には同じような意味合いとして使われます。(ここでは「抗生物質」で言葉を統一させて頂きます。)

系統別に様々な種類が存在し、それぞれ得意とする相手(細菌)により使い分けられています。
代表的な系統としてペニシリン系やセフェム系、マクロライド系やニューキノロン系などが挙げられます。

細菌の特性を利用して効果を現すお薬なので、細菌以外の感染症(ウイルス、真菌等)には効果がありません。

やっぱりカゼには抗生物質は効かないの?

いわゆるカゼの原因のほとんどを占めるウイルスは、細菌よりはるかに小さく、抗生物質の標的にはなり得ません。そのため、カゼに抗生物質を使っても意味がないのです。

ただし、二次的な肺炎や髄膜炎の予防等に抗生物質が使われることはあります。しかしながらこれはカゼ(≒感冒)そのものに効果があるわけではありません。

カゼを治すのは患者さん自身の免疫であり、お薬ではありません。お薬はカゼの症状を和らげることにより免疫・体力の回復のお手伝いをするだけですので、しっかりと休養をとって養生する事が治療の基本となります。

耐性菌ってなに?

細菌にとって抗生物質は猛毒ですので、何とかしてこれを克服するべく日々進化し続けています。
その進化の中で、抗生物質への耐性を獲得することにより生き残った菌を薬剤耐性菌と呼びます。

世界の中でも、日本では多くの耐性菌が生まれていて、薬の効かない感染症を引き起こしています。
また、一種類の抗生物質だけでなく様々な系統の抗生物質に抵抗性を持ち、効かなくなってしまった耐性菌を「スーパー耐性菌」や「スーパーバグ」と呼び、これは世界人類の脅威とまでなろうとしています。

どうして耐性菌が増えているの?

抗生物質を使う回数が増え、細菌が抗生物質にさらされる機会が多ければ、それだけ耐性菌への進化の機会も増えます。
中途半端に服用を中断したり、1日3回の抗生物質を自己判断で1日2回に減量して服用するなど、抗生物質が不十分・不適切に使われると、生き残る耐性菌の数も多くなります。
また、多くの菌に効果のある抗生物質の服用により、対象細菌以外にも多くの菌が死滅してしまうと、生き残った耐性菌はライバルのいない中、のびのびと増殖してしまいます。

私たちに出来ることは?

抗生物質の無用な使用を防ぐことで、耐性菌の発現は防ぐことが出来ます。すでに国によっては抗生物質の使用に規制があるところもあります。

また、カゼには効果がないのに、抗生物質を出してほしいと医師に頼んだり、何でもかんでも抗生物質を服用すれば治るといった患者側の意識改革も必要となります。

さらに、いざ抗生物質が処方された時には、症状が落ち着いてきても自己判断で服用を中止・減量したりせず、しっかりと最後まで飲みきって、生き残りの菌の発生を防ぎましょう。

もしお薬の服用に際して不安や疑問があった場合は、遠慮せずかかりつけの医療機関や薬局にお問い合わせ下さい。

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