今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その189(2023年3月号)
Q
お酒が薬に及ぼす影響について教えてください
A
お酒と薬の関係は、アルコールを処理する能力、飲酒量、薬の種類によって異なります。予測が難しく様々な影響があるため、薬を服用する際はアルコールの摂取は避けたほうがいいでしょう。
詳しくは医師・薬剤師にご相談ください。

お酒が薬に及ぼす影響

お酒に関することわざは多く、「酒は百薬の長」「酒は万病のもと」などはよく知られています。ことわざが意味する通り、お酒はその飲み方次第で、薬にも毒にもなってしまいます。

そもそも薬は水で飲むのが基本です。みなさんも薬をもらう際、「アルコールは控えてくださいね」と言われたことがあるのではありませんか? では、どうしてお酒と薬を一緒に飲んではダメなのでしょうか。


最近は「水なしでも飲める」薬が多く発売されていますが、医薬品は水で服用することを前提に設計されていますので、水や白湯で飲むことをお勧めします。牛乳、コーヒー、ジュースなどの飲料水での服用は、薬剤の吸収に影響しますが、中でもアルコールでの服用は特に注意が必要なのです。

アルコールは多くの薬に影響を及ぼします。その影響は薬によっても異なりますが、典型的な影響として、薬の作用や副作用を増強してしまう危険性があります。アルコールも薬も肝臓で代謝されます。その際、使われるのがCYP2E1(チトクロームP450)などの代謝酵素です。薬とアルコールを一緒に飲んだ場合、この酵素を奪い合うことになるのです。

アルコールとの摂取で特に問題となる薬

アルコールと一緒の摂取が、特に問題になる薬を一部ご紹介します。

解熱鎮痛薬

アスピリンとお酒を一緒に飲むと相乗効果によって胃が荒れてしまいます。またアセトアミノフェンを含んだ解熱鎮痛薬では肝機能障害を起こすことがあります。

睡眠導入剤

睡眠導入剤(ハルシオンやレンドルミンなど)と一緒に飲むと、効き目が強く出る可能性があります。

糖尿病薬

糖尿病薬と一緒に飲むとアルコールの酔いが非常に強くなって悪酔いすることがあります。また、薬が効きすぎてしまい低血糖状態になることもあります。

血液が固まるのを防ぐ薬

ワーファリンなどの経口凝固剤と一緒に飲むと、薬が効きすぎて血が止まらなくなる、脳出血を起こす、胃や腸からの出血を起こす、吐血や下血を起こすなど生命に危険を及ぼすことがあります。

利尿薬

降圧利尿薬と一緒に飲むと、血圧が急激に下がり、めまいを起こすことがあります。

抗うつ薬

抗うつ薬と一緒に飲むと、血液中の濃度が上がり、効きすぎてしまうことがあります。その結果、精神の錯乱、幻覚、手の震え、食欲不振などが起こることがあります。

最後に

アルコール摂取を考えるとき、ビール、ウィスキー、ワイン、日本酒等を思い浮かべますが、市販のドリンク剤にもアルコールが添加されており、医薬品とアルコールとの飲み合わせを考える場合には無視できません。購入時には、薬剤師に相談してください。
また、長期にわたりアルコールを摂取している場合は、薬の代謝酵素系が亢進し、薬が効きにくくなることもあります。アルコールと薬の飲み合わせは多岐にわたるため、薬を服用する場合には、飲酒は控えることが賢明です。気になる方は、医師、薬剤師にご相談ください。


【参考文献】
  • 医学書院 「治療薬マニュアル」