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今月のくすり問答


薬の飲み方Q&A その18     (平成20年12月号)
Q 風邪の予防法にはどんなものがありますか?

 @栄養バランスのよい食事 A規則正しい生活 B十分な睡眠 C適度な運動 Dストレスを溜めない Eマスクの着用 F部屋の乾燥を防ぐ G衣服でのこまめな体温調節 H帰宅時の手洗い、うがい ・・・などが考えられます。


◆ かぜの概念 ◆

かぜは、そのほとんどが病原微生物の呼吸器への感染でおこる病気ですが、原因の種類に関係なく、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・咳・痰などに加え、発熱・頭痛・全身倦怠感・食欲不振などの全身症状(時に、嘔吐や下痢などの胃腸症状)を伴うと言う点では共通しているので、一括してかぜ症候群と取り扱われます。

かぜ症候群は、日常診療の場では最もありふれた疾患(年間一人あたりの平均罹患回数は5〜6回と言われています)であるためでしょうか、万病の元といわれながらも軽く見られがちです。しかしこじらすと不愉快な症状が続くだけでなく、二次的に気管支炎や肺炎などを起こし、時に重篤な状態になることもよく知られています。特に乳幼児や老人、種々の慢性疾患をお持ちの方は注意が必要です。

◆ かぜの原因 ◆

かぜの原因の多く(80〜90%)はウイルスですが、なんと200種類以上もあり、ウイルスの種類により症状に若干の特徴が見られます。しかし、その症状特徴だけでは、ウイルスを完全に特定する事はできず、ウイルスの培養検査をしても結果がわかる頃には病気も治ってしまうため、日常臨床の場で原因を特定することはあまり行われていません。
インフルエンザAなどごく一部のウイルスについては、短時間で結果がでる検査キットが発売されています。


◆ かぜの予防法 ◆

■うがい:
京都大学保健管理センターの川村先生が2003年に行った調査で非常に興味深い事が判明しました。全国、18地域で、うがいの風邪予防効果を調べたところ、うがいをしなかった群が1ヶ月で100人あたり26.4名が風邪をひいたのに対して、水うがい群では17人、ヨードうがい群では23.6人でした。この結果を統計学的手法で解析すると、水でうがいをした場合、うがいをしない場合に比べて40%も風邪の発症が抑制されたのに対して、これまで効果があると思われていたヨードうがい群では、意味のある抑制効果は認められなかった。( ヨードはウイルスを20秒以内に不活化しますが、のどの粘膜細胞や正常の細菌叢にも影響を与えてしまう事が、風邪の予防効果にマイナスの影響を与えたのかもしれません。最近、傷の治療にも、消毒剤は使わない方が良いと言われている事と併せ、興味深い知見です。)

■マスク:
咳1回で約10万個、くしゃみ1回で約200万個のウィルスを含んだ飛沫物が、くしゃみでは約3m、咳では約2m先まで放出されます。通常のマスクは、ウイルスを含む飛沫物を完全にブロックする事はできませんが、咳やくしゃみでばらまかれる範囲を狭くしたり、ある程度捕捉する効果はあり、ウイルスの侵入を約3割減らすと言われています。
また、ウイルスが付着した手で口や鼻を触る機会を減らしたり、吸気に湿気を与え、吸気の温度を上昇させる効果などもあります。
したがって、不織布製のマスク(ガーゼマスクはダメ)であれば、そこそこの効果は期待できると思われます。
なお、飛沫核物質は顔や髪や手などにも付着しますので、マスクの扱いや外した後の対応にも配慮が必要です。

■加湿:
風邪のウイルスの中でも、冬に流行するインフルエンザウイルスなどは湿度に極めて弱い性質がありますので、部屋の湿度を上げることは、インフルエンザの予防に非常に効果的です。
冬は湿度が下がっている上に、クリーンヒーターなどの普及、住宅事情の変化により冬の一般家庭の部屋の湿度は非常に低くなっておりますので、加湿器や洗濯物を室内に干すなどで、お部屋の湿度を上げる努力をする事をお勧めします。一方夏に流行するウイルスは、高湿度が大好きですのでご注意下さい。ちなみに、普通感冒の代表的な原因であるライノウイルスは50%以上の湿度で良く生存するそうです。

■手洗い:
普通感冒の代表的な原因であるライノウイルスは、付着した器具の上で数時間〜数日生存可能で、接触感染が主たる感染経路である事がわかっていますので、特に効果が期待できます。
インフルエンザウイルスも飛沫や飛沫核の形で、手や顔、衣類等にも付着しますし、カラオケボックスのマイクや電車の吊革、手すりなどには非常に多数のウイルスが付着しています。それらに触った手で目をこすったり、鼻をいじったりすることも感染経路の1つですので、帰宅後に石鹸で手や顔を洗うことは、一般に考えられているよりも効果的です。

■保温:
寒いところでは、鼻・のど・気管などの血管が収縮して線毛の動きが鈍くなります。線毛はウイルスや細菌の侵入をできるだけ少なくする働きをしますので、線毛の働きが悪くなるとウイルスが侵入しやすくなります。したがって、保温は風邪の予防に十分価値があると言えます。但し暖めすぎは逆効果ですので、ご注意下さい。

■ビタミンCの効果:
ビタミンCの風邪に対する予防あるいは治療効果は、多くの報告がありますが、これらの報告を総合すると、冬の数ヶ月間に毎日1g以上摂取しても、普通感冒の罹患回数は減らなかった。ただし、感冒による有症状日数を若干短くする効果は認められた(1回の風邪で0.44日短縮)となる様です。

■人混みを避ける:
人が多く集まる所では、中には風邪をひいている方もいるわけですので、風邪のウイルスに接触する機会が多くなります。ですから、できるだけ感染の機会を減らすために、人混みを避け、またそのような場所から帰ったら、上述のように手洗い、うがいなどを励行する事は、風邪の予防に効果的です。

■その他:
風邪の治療の基本は、安静・保温・栄養&水分の補給の3つと言われます。無理をしないで、十分な睡眠をとり、栄養のバランスを考慮した食事などは、基本的な対策として必要な事は言うまでもありません。強いストレスは、リンパ球を抑制して、免疫を低下させるので、ストレス発散を上手にする事もお忘れなく。






◆ かぜの合併症 ◆

かぜは万病の元とよく言われます。確かにかぜをきっかけとして体調を壊すことはよくあります。かぜといえども甘く見てはいけないのは、さまざまな合併症があるからです。

■肺炎:
最も頻度の高い合併症で、かぜのウイルスにより破壊された呼吸器粘膜から二次的に、ぶどう球菌・インフルエンザ桿菌・肺炎球菌・レンサ球菌などの細菌が感染し引き起こされます。肺炎の合併はインフルエンザの時に頻度が高いことはよく知られている事で、乳幼児や老人では特に注意が必要です。なお、インフルエンザでは、いったん治癒したと思われてから、3〜10日経ってから発症するインフルエンザ後肺炎にも気をつけなければなりません。

■髄膜炎:
かぜに伴う髄膜炎は細菌によるものではないという意味から、無菌性髄膜炎と呼ばれます。主としてウイルス(エコー・コクサッキーなどエンテロウウイルスが全体の90%、他にアデノウイルス、ムンプスウイルスなど)の感染により、高熱と頭痛・嘔吐・項部硬直(首から肩までが板の様に固くなる状態)などの髄膜刺激症状で急激に発症します。通常、髄液検査により診断が確定します。予後は一般に良好で、1週間前後で良くなります。

■中耳炎:
咽頭には鼓膜の内側に通じる管(耳管)が開口しており、小児では大人に比べてこの管が太く短く傾斜がないなどの理由で容易に細菌が内耳に到達しやすい構造になっています。このためかぜをひいた後に耳を痛がる様な症状がみられたときには、真っ先に中耳炎の合併を疑います。

■結膜炎:
鼻涙管(鼻腔と眼をつなぐ管)を介した感染や涙目をこすることなどによる細菌感染のほか、咽頭結膜熱などでは、症状の一つとして結膜炎を伴うなど比較的よく見られる合併症です。多くの場合、抗生物質の点眼薬により簡単に治癒します。

■副鼻腔炎:
副鼻腔は鼻の周りにある頭蓋骨の空洞です。この空洞は鼻腔に通じておりますので、かぜをひくと鼻腔にいるウイルスや細菌が副鼻腔の粘膜に伝わって副鼻腔炎を起こすことがあります。頭重感や頭痛、目の奥の痛みなどの症状が見られます。なお、蓄膿症は慢性副鼻腔炎の別名です。

■ライ症候群:
小児において極めてまれに、水痘・インフルエンザなどのウイルス性疾患の先行後に、激しい嘔吐、意識障害、けいれん(急性脳浮腫)と肝臓ほか諸臓器の脂肪沈着、ミトコンドリア変形、GOT・GPT・LDH・CPKの急激な上昇、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖などの症状が短期間に発現する高死亡率の病態をライ症候群といいます。アスピリン(解熱剤の1つ)の投与との関連が指摘されていますので、インフルエンザや水痘の可能性の高いときにはこの製剤を使わない事が大切です。

■インフルエンザ脳症・脳炎:
比較的希な合併症ですが、いったん発症すると重症化する事がありますので注意が必要です。頭痛・けいれん・意識障害などの症状で始まります。おかしいな?と思った時には、早めに医療機関を受診して下さい。

■心筋炎:
コクサッキーウイルスによる心筋炎がよく知られていますが、インフルエンザウイルスでも時にみられます。致死的な合併症となることがありますので、注意が必要です。

■その他:
その他の合併症としては、急性小脳失調症やギランバレー症候群、筋炎などが上げられます。


◆ かぜとよく似た病気 ◆

鼻水、のどの痛み、咳、などのいわゆる「かぜ」症状や発熱が見られたときに、かぜ以外の病気の可能性も考えられます。
「かぜをひいたな」と思った時に最も大切なのは、これら「かぜ以外の病気」と「かぜ」を間違わないことです。
通常、かぜならば自然に治りますが、かぜ以外の病気では治療の遅れが重大な結果をもたらすことがあるからです。
以下にかぜ症候群と区別しなければならない代表的な疾患を上げてみます(順不同)。

■溶連菌感染症:
A群β溶血性連鎖球菌という細菌の感染により引き起こされる疾患です。咽頭痛が強く、のどが赤く腫れます。抗生物質が著効しますが、治療が不十分だと急性腎炎やリウマチ熱の危険がありますので、きちんと治療することが大切です。

■細菌性肺炎:
肺炎はかぜ症候群の一病型としてもとらえられており、普通のかぜに続発する場合も少なくありません。肺炎の原因にはいろいろありますが、細菌による肺炎を細菌性肺炎と呼びます。肺炎球菌・インフルエンザ菌、肺炎桿菌、ぶどう球菌などが起炎菌として上げられます。起炎菌や発症年齢によって病態は変わりますが、発熱・咳・痰を主症状とし、胸痛や呼吸困難などがみられます。胸部レントゲン検査で診断されます。軽いものは外来加療で治癒しますが、入院が必要となることも少なくありません。

■肺結核:溶連菌感染症:
咳が長く続き、微熱(寝汗をかく)がみられる時には、肺結核を疑って、胸部レントゲン検査などを行う事が大切です。少なくなったとはいえ、結核は無くなったわけではありません。

■胸膜炎:
胸膜(肺を包んでいる膜)の炎症で、細菌、結核菌、癌などが原因となります。発熱・胸痛・咳などがみられ、胸水がたまります。聴打診所見からその存在が疑われ、胸部レントゲン写真で診断されます。

■肺癌:
いわゆる癌年齢の方、ヘビースモーカーの方は要注意。なかなかかぜが治らないと言う場合に、肺癌だったりすることがあります。胸部レントゲン検査、CT検査、痰の細胞診、気管支鏡検査などにより診断されます。

■クループ症候群:
声を出すところ(喉頭といいます)が細菌やウイルス感染により炎症を起こしてはれる病気で、犬が遠吠えするときのような独特の咳がでます。ひどくなると息を吸うときにぜーぜーと音がするようになります(喘息または喘息性気管支炎の時は、息を吐くときに音がしますので区別できます)。乳幼児では、夜間突然呼吸困難発作(息苦しがり、息を吸うときに音がでる)を起こすことがありますので、早めの治療が大切です。寒い季節に多く、3カ月〜3歳に好発し、6歳以降はまれです。

■伝染性単核症:
Epstein Barrウイスルやサイトメガロウイルスにより引き起こされる疾患で、発熱、咽頭炎、扁桃炎、リンパ節腫脹などで発症します。肝機能障害の見られることもあります。診断には血液検査が必要です。

■急性肝炎:
発熱・頭痛・咽頭痛などのかぜ症状で発症することがあります。経口感染するA型肝炎とE型肝炎に注意が必要です。全身倦怠感(だるさ)が強いのが特徴。黄疸が見られる時には可能性が強まります。診断確定のためには、血液検査が必要です。

■急性腎盂腎炎:
腎実質の細菌感染症です。悪寒(さむけ)・戦慄(ふるえ)を伴った高熱がみられ、腰の付近をたたいて痛がるときには、本疾患が疑われます。排尿時痛などの膀胱炎の症状が先行する事もあります。尿検査と血液検査を行い診断します。

■麻疹:
はじめ熱・咳・鼻水・目やになど通常の風邪と同じ症状が出ます。この時期には麻疹と診断する事はできません。4日目位に一度熱が下がりますが、半日から1日後に高熱とともに発疹がでます。発疹はほぼ円形の紅い斑点で5mmくらい。顔からはじまり全身へと広がっていきます。約5日くらいで熱もさがり、発疹も消えてきますが、高熱が1週間以上続きますので、早めに予防接種を受けておくことが大切です。 

■風疹:
風疹ウイルスの飛沫感染により発症します。3日ばしかとも言われ、軽い発熱とともに顔や首などに小さくて赤い発疹がでます。耳の後ろや首のリンパ腺が腫れて押すと軽い痛みがあります。熱は出ないこともあり、風疹以外にも同じ様な症状を示すウイルス感染症(感冒性発疹)がありますので、確定診断には血液中の抗体を調べる必要があります。

■髄膜炎:
主としてウイルスの感染により、発熱と髄膜刺激症状(頭痛・嘔吐・項部硬直)などの症状を呈する急性感染症です。高熱に頭痛と嘔吐が伴い、重症感のある時には、本疾患を疑って必要な検査をすることが大切です。

■アレルギー性鼻炎:
通常季節性で、透明な鼻水に目のかゆみ(アレルギー性結膜炎)を伴う場合には本疾患の可能性が高くなります。アレルギーの検査をする事により、診断が確定します。通常、発熱や咳はみられません。

■急性中耳炎:
通常、耳の痛みが見られます。乳児などでは、発熱のみで、いわゆるかぜ症状が無い場合には、本疾患を疑ってみる必要があります。

■その他:
膠原病なども発熱で発症することがあります。熱以外に膠原病に特有の症状が色々な組み合わせでみられますので、かぜとの鑑別はさほど難しくありません。