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今月のくすり問答


薬の飲み方Q&A その71     (平成25年5月号)
Q  糖尿病薬を服用する時に注意する事はありますか?

 
糖尿病では、食事療法・運動療法でも効果がみられない場合や、重い合併症を防ぐためなどに糖尿病治療薬を使います。薬の効果が現れているか、定期的な検査を受けながら服用してください。


◆  糖尿病とは?  ◆  

糖尿病とは人体の膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが不足するため、高血糖をはじめとする代謝異常が起こり、その結果、血管の障害を中心とするさまざまな合併症をひきおこす病気です。

遺伝的素因が強く影響し、その多くは長い時間とともに徐々に悪化します。
治療せずに放置すれば症状はさらに悪化し、最終的に糖尿病性昏睡になどで死亡することもあります。

早期に食事療法や運動療法を基礎とした適切な治療を行えば、症状を改善することできますが、自覚症状はほとんどないので、知らず知らずのうちに糖尿病が悪化し、種々の合併症をおこして生命に危険をもたらすことがありますので注意が必要です。


◆  糖尿病の原因  ◆  

糖尿病は1型と2型にわけられます。

遺伝と関係なくおもに膵臓の機能が衰えておこるとされているのが1型。
また遺伝的素因が強いのが2型です。

1型は膵臓機能が低下しているため治療にはインスリン自体を補充する必要があります。糖尿病患者の約1割を占め、『インスリン依存型』と呼ばれます。

2型は成人に多く発症するもので、糖尿病患者の約9割を占めます。
食事療法や運動療法、薬物によっての治療が行われます。

インスリン非依存状態が多く、肥満、高血圧、高尿酸をはじめ他の疾患の発症、過労、ストレス、妊娠などがこのタイプの発病の原因と言われています。




◆  糖尿病の治療  ◆  

血糖値を正しくコントロールし膵臓機能の異常状態を正常にすること共に合併症を予防し、また発症を遅らせることが糖尿病の大きな治療目的となります。

まず食事療法が基本となります。それに合わせて運動療法も重要です。

食事療法・運動療法を行っても糖尿病がまだ十分にコントロールされない場合は、経口糖尿病治療薬やインスリン注射薬を使用します。

血糖値をコントロールするにあたり、空腹時血糖値が120mg/dl以下、食後2時間の血糖値が170mg/dl以下、ヘモグロビンA1c値が6.5%未満であることが基本です。
しかしこれはあくまでも検査値の目安だけの話で、今現在合併症がなく、体重が標準体重範囲にあることが大前提となります。

食事療法は、やみくもに食事制限をするものではなく、その人その人の体重から計算された適切なカロリーを摂取することを目的としています。

糖質、タンパク質、脂質の三大栄養素からバランスよく摂取することが重要です。
病院などに栄養士がいますので、献立指導を受けてみるのもよいでしょう。

ビタミンやミネラル類も不足しないよう注意することが大事です。

アルコールについては1日あたり、ウイスキーならシングル2杯、日本酒なら1合、
ビールなら中瓶1本、ワインならワイングラス2杯程度にとどめてください。

しかし薬物療法併用者の場合は、原則として禁酒を推奨いたします。


◆  糖尿病の薬物治療   ◆  

経口糖尿病治療薬は、2型糖尿病に有効で、食事療法や運動療法を行っても血糖値が下がらない場合に服用します。

定期的に薬が効果を発揮しているかどうかの検査を受けながら服用する必要があります。

・経口糖尿病治療薬にはインスリン分泌を推進し血糖値をさげる薬、
・肝臓において糖を作り出す作用を抑え、筋肉や脂肪細胞内にて糖利用を高め血糖値を下げる薬、
・小腸での糖質の消化・吸収を遅らせ食後の高血糖を改善させる薬、
・インスリン分泌促進を促すホルモンを分解する酵素の働きを抑える薬、
などがあります。

いずれにしろ症状と検査値、その他相対的に治療薬は選択されます。




◆  糖尿病のインスリン療法  ◆  

注射のインスリン療法を行う場合も、食事療法・運動療法を行う必要があります。

インスリン療法は、インスリン依存性の糖尿病の方だけでなく、インスリン非依存性糖尿病の人でもインスリンの自己注射をおこなうので、患者自身もインスリンについてある程度の知識をもつことが必要です。

糖尿病に対するインスリン注射は、体内の不足しているインスリンを補うため、毎日指示されているインスリン量を注射しなければなりません。

注射部位は同じ場所ばかりせず、大腿部、腕、腹部、臀部など自分で最良の部位をきめて、毎日部位少しずつ変えて注射します。

インスリン療法では特に低血糖に注意が必要です。
インスリンの量を間違えたり、インスリンの注射をしたのち食事をしなかったり、運動が過剰になったりすると、低血糖症状が現れることがあります。

万一、低血糖症状がおこった場合は、ショ糖を含む食品を摂取したり、経口糖尿病薬の種類によってはブドウ糖を摂取する必要があります。

腎機能を保つため最近では早期からインスリンを導入する患者さんが増えています。




◆  糖尿病の運動療法  ◆  

適当な運動をすると、筋肉内のブドウ糖摂取が容易になり、インスリンの使用が節約されて体内の代謝が向上します。

心臓、腎臓、肺に疾患のある人や網膜出血がおきたばかりの人は運動を避けるべきでありますが、それ以外の人はウォーキングやジョギングなど全身運動を毎日一定時間行うことで、糖尿病に対する補助的治療法となります。




◆  糖尿病の合併症  ◆  

糖尿病には様々な合併症を発症する恐れがあります。

以下にそのいくつかを記載します。

1、糖尿病神経障害
合併症の中で最も早く出てくるのがこれです。中心となる足や手の末梢神経障害の症状の出かたはさまざまで、手足のしびれ、けがややけどの痛みに気づかないなどです。そのほか筋肉の萎縮、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常、インポテンツなど、さまざまな自律神経障害の症状も現れます。

2、糖尿病網膜症
目の底にある網膜という部分の血管が悪くなり、視力が弱まります。中には失明する場合もあります。また、白内障になる人も多いといわれています。

3、糖尿病腎症
腎臓の、糸球体という部分の毛細血管が悪くなり、だんだんにおしっこが作れなくなります。すると人工透析といって、機械で血液の不要な成分をろ過して、機械でおしっこを作らなければなりません。週に2〜3回、病院などで透析を受けるようになるので、日常生活に大きな影響を及ぼします。現在、人工透析になる原因の1位がこの糖尿病腎症です。

その他、脳卒中、心筋梗塞・狭心症、糖尿病性足病変、歯周病など、全身のあらゆる臓器に合併症が起こります。





◆  最後に  ◆  

糖尿病は今や国民病ともいわるほど患者数が増大しています。
しかし、正しい治療を受ければQOL(生活の質)を保つことができます。そのためには正しい知識を持つことはもちろん、疾患に対しても正面から立ち向かう必要があります。

自分だけは大丈夫、面倒くさいなどと思わずにかかりつけの医師を持ち、定期的な検査を受けるようにして下さい。薬物治療も日々進化しており、次々に新しい治療薬が登場しています。
我々薬剤師も皆様の治療のお手伝いをしてまいりますので、ぜひお近くの薬局の薬剤師にご相談ください。