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今月のくすり問答


薬の飲み方Q&A その83     (平成26年5月号)
Q  乗り物に酔いやすいので、旅行が心配です・・・。
   何か気を付けておくことはありますか?


 
前日は充分睡眠をとり、体調を整えましょう。
また空腹や食べ過ぎにならないようにします。
乗る30分くらい前に酔い止め薬を飲んで、安心して乗りましょう。
いろいろなタイプの薬がありますので、薬局でご相談ください。


◆  乗物酔いの発生の原因、治療について ◆ 





乗り物酔いの原因は、揺れによって側頭骨の中にある内耳の平衡感覚器官(三半規管と耳石器)が刺激されることにあります。

つまり、三半規管と耳石器に対する通常より大きな刺激と、それに加えて揺れる風景を見ることによる目の運動刺激が加わって生じます。

乗り物に乗ったときは、
・進行方向に向かって前後に浮き沈むような揺れ(pitching)
・進行方向の軸の周りを回転するような揺れ(rolling)
・進行方向に向かって左右へずれるような動き(yawing)
などの回転加速度運動。

同時に
・上下に沈んだり浮いたりするときに生じる垂直加速度運動
・左右に急速に動くときに生じる水平加速度運動
が起こります。

このような乗り物に乗ったときに生じる加速度の感受装置が平衡感覚装置です。







xyz軸に分けると水平半規管がx軸の水平回転、前半器官がy軸、後半器官がz軸の回転加速度運動をそれぞれの感覚細胞が感受します。

同時に、垂直加速度運動を耳石器の球形嚢、水平運動の加速度運動を卵形嚢の感覚細胞が感じ取ります。

揺れが強ければ強いほど刺激されて症状が激しく表れ、前庭自律神経反射のために悪心と嘔吐が生じやすくなります。

これは平衡感覚器に過剰で過大な力が入って刺激されるためで、立っても体のバランスが保てないほどのこともあります。

さらに乗り物の内外で揺れる風景を見ると、水平方向や垂直方向の大きな揺れの刺激が視覚から入り、さらに気分が悪くなる。

以上のようにして乗り物酔いが生じることとなります。


予防ですが、乗り物に乗る前の心理療法やジフェンヒドラミン・ジプロフィリン(トラベルミン)やメシル酸ベタヒスチン(メリスロン)とジフェニドール塩酸塩(セファドール)の内服が効果があります。

一方、乗り物酔いが生じてしまった後は周囲を暗くして眠るのがお勧めです。

乗り物酔いは生じやすい人とそうでない人がいます。

揺れの刺激の弱い乗用車や電車に乗るだけで乗物酔いが生じる人もいますが、もともとめまい感覚の閾値が低い(めまいを起こしやすい)のが特徴で、うまれつきの体質的な要素の影響が強いようです。

乗物酔いに対する不安や思い込みが強い場合も少なくなく精神的な面も考えられます。

めまい感覚は適度で一時的な刺激であれば楽しむことができます。
三半規管や耳石器を刺激する遊びは結構多くあります。
公園にあるブランコや鉄棒、遊園地にあるジェットコースターや垂直に落下させるパラシュート装置などがそうです。

一般的に、子供のほうがめまい感覚の対応力は高く、大人は低いようです。



<独立行政法人国立病院機構 東京医療センター・臨床研究 (感覚器)センター センター長 加我君孝先生の文章より引用>