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今月のくすり問答


薬の飲み方Q&A その102     (平成27年12月号)
Q  あなたの肝臓、大丈夫ですか?

人一倍働き者で、我慢強い肝臓。もの言わぬ臓器ともいわれます。
少しぐらいダメージを受けても黙って働きつづけてしまうので、病気になっていることに気づきにくいのが肝臓病です。この時期はとかく肝臓に負担のかかる季節です。
規則正しい生活と定期的な健康診断が重要です。


        


 ◆  肝臓病とは?  ◆ 

肝臓病とは、肝臓の組織に炎症が起こった状態のことをいいます。
働き者で、我慢強い肝臓は、ダメージを受けても働き続けてしまうので、炎症が起こっていることに気付きにくいという特徴があります。

肝炎は、肝臓の細胞に炎症が起こり、肝細胞が壊される病態です。
その原因には、ウイルス、アルコール、自己免疫等がありますが、日本では、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルス感染による肝炎がその多くを占めています。

我が国の肝炎(ウイルス性肝炎)の持続感染者は、B型が110万人〜140万人、C型が190万人〜230万人存在すると推定されていますが、感染時期が明確ではないことや自覚症状がないことが多いため、適切な時期に治療を受ける機会がなく、本人が気づかないうちに肝硬変や肝がんへ移行する感染者が多く存在することが問題となっています。

また、肝炎ウイルスに感染している人は40歳以上の方が9割以上を占めていますが、最近B型肝炎において若い人の感染も増加しています。

検査をできるだけ早く受けて感染を知り医療機関で適切な治療を受けることで肝硬変や肝がんといった深刻な症状に進行するのを防ぐことができます。

現在、ウイルス性肝炎は治る、もしくはコントロールできる病気になっています。ウイルス性肝炎についての正しい知識を得て、早期発見・早期治療に結びつけましょう。



 ◆  肝炎の原因  ◆ 

≪ウイルス性≫
肝炎ウイルスに感染することによって肝臓に炎症が起こる病気です。
現在、A型、B型、C型、D型、E型などがあります。
日本人に多いのはA型、B型、C型です。

≪アルコール性≫
長期間、お酒を飲み続けることによって引き起こされる肝臓の障害です。
肝臓はアルコールを分解する働きをします。
頻繁に大量のアルコールを摂取し続けると肝臓に大きな負担がかかり、肝細胞を傷つけてしまいます。

≪薬剤性≫
服用した薬剤が原因となって肝障害を起こすことをいいます。
薬剤の直接作用によって起こる中毒性肝障害と薬剤のアレルギー反応によって起こるアレルギー性肝障害に区別されます。

≪自己免疫性≫
免疫機構が何らかの原因で異常をきたし、肝障害を引き起こす病気です。
若い女性や更年期の女性に多いのが特徴です。


 ◆  肝炎の症状  ◆ 

肝炎の感染原因は何であっても、症状は似ていますが、発症の仕方や症状の経過から「急性肝炎」「慢性肝炎」「劇症肝炎」の3つに大きく分類することができます。

<急性肝炎>
急性肝炎は肝臓の組織に炎症が起こり、その炎症がおよそ6ヵ月以内に治まるものです。
ほとんどの場合が、原因となる肝炎ウイルスに感染し、潜伏期の後、風邪に似た症状に続き、黄疸などの症状が急に出現して肝炎と気付きます。
原因としては、約40%がA型肝炎ウイルス、約30%がB型肝炎ウイルスによる感染です。 ほとんどが適切な治療によって1〜2ヵ月で治りますが、場合によっては重症化したり、劇症肝炎に移行することもあるので入院治療が必要になります。

<慢性肝炎>
一般に6ヵ月以上にわたり肝臓の機能障害が続いたり、肝臓の腫れや炎症が続いているものをいいます。
急性肝炎から移行したものもありますが、ある時期までは無症状で経過し、健康診断などで発見されることが多く、その原因は約70%がC型肝炎ウイルス、約20%がB型肝炎ウイルスによる感染です。
慢性肝炎の治療は長期に及びますが、適切な治療を受けなければ、肝硬変、肝臓がんに移行します。

<劇症肝炎>
急性肝炎のうち、特に肝細胞の破壊が急激に進んで、肝臓の機能が維持できなくなり、黄疸の進行、腹水など肝不全状態が出現した状態です。
急性肝炎の際に、黄疸に加えて吐き気・嘔吐が持続し、だるさが強くなってくるときは、劇症肝炎の特徴のため注意が必要です。
劇症肝炎になると、興奮・錯乱状態になり、訳の分からないことを言ったりします。 さらに進行すると、昏睡状態に陥ってしまうなど、意識障害が悪化します。急性肝炎のうち、約1%が劇症肝炎になるといわれ、死亡率が非常に高くなっています。




 ◆  肝炎の治療  ◆ 

肝炎は急性、慢性の症状がありますが、急性肝炎の時は安静にすることが基本です。
食欲がなく栄養を十分に取れないときには、ブドウ糖を中心とした点滴により栄養を補います。
しかし、B型肝炎やC型肝炎の方の中には炎症が治まらずに慢性化し、薬による治療が必要になる場合もあります。薬物療法を始める前には必ず、検査を行って、病気の進行度や治療効果、副作用発現の可能性などを評価しておくことが重要です。

その上で、抗ウイルス剤でウイルスを体外へ排除し治癒を目指すのか、対症療法として肝庇護剤を使用して肝臓の炎症を抑える治療を行うかを決定します。

【 抗ウイルス剤 】

 ◆インターフェロン
インターフェロンはウイルスの増殖を抑え、ウイルスの遺伝子も壊す作用があると考えられています。しかし、この薬は効く人、効かない人があり、治療を開始するための条件が決められています。また、発熱・全身倦怠感など副作用が多いことも知られています。

 ◆飲み薬
これまで、C型肝炎の治療は、抗ウイルス剤の服用とインターフェロンの注射の併用が中心でしたが、昨年より抗ウイルス剤の飲み薬のみでの治療が可能となりました。治療薬の値段が高く、県などからの助成を受けることができます。


【 肝保護治療 】

 ◆強力ネオミノファーゲンシー
肝機能検査値(AST、ALT)の値を下げます。治療を中断してしまうと、再び数値は上がってしまい、肝炎は再発します。治療を継続することで、肝硬変、肝細胞がんへの進行を遅らせることができます。

 ◆小柴胡湯
肝臓病の代表的な漢方薬。肝臓の破壊や線維化を抑え、肝細胞の再生を促進する働きがあります。インターフェロンとの併用で間質性肺炎といわれる重篤な副作用が発生することがあります。

 ◆ウルソデオキシコール酸
胆汁の流れをよくすることで、肝機能が改善されます。肝機能検査値(AST、ALT)を少しずつ確実に低下させます。強力ネオミノファーゲンシーが効かない患者に併用することがあります。




 ◆  肝臓病の予防  ◆ 

肝炎は、ウイルスの種類によって感染経路が異なるため、予防の仕方が異なります。
感染経路は主に経口感染と血液感染の2種類あります。

≪A型肝炎ウイルス≫
A型肝炎ウイルスは経口感染します。
A型肝炎ウイルスは、感染者の便中に排せつされるため、その便を畑の肥料に使えば野菜などが、また上下水道の未整備や洪水などがあれば、飲料水が汚染されます。
汚染された生水、生ものを口にすることで感染します。

現在は東南アジアなどへ旅行した際に感染するケースが多くみられます。
そのため、東南アジアなどでは生水、生ものは口にしないことが大切です。
渡航の際、事前にワクチンの接種を受けておくのは、より確実な予防法です。

≪B、C型肝炎ウイルス≫
B、C型肝炎ウイルスは血液感染します。
B型肝炎ウイルスは、血液中でのウイルス量が多いため感染力が強く、C型肝炎ウイルスは、ウイルス量が少ないので感染力が弱いことがわかっています。
予防のポイントは血液に直接触れないことです。(手に血液がついても傷がなければ感染はしません)
ウイルス感染を予防しつつ、食べすぎ、飲みすぎの食生活を改善することで、肝臓への負担が減り、肝機能の低下を防ぐことができます。




 ◆  食事対策 (肝臓をいたわる食生活とは?)  ◆ 

まずタバコやアルコールをやめ、できるだけ外食は避けましょう。
そして、肝機能を高めるアミノ酸を含む低脂肪の優良タンパク質と、ビタミンやミネラルが豊富な野菜を中心とした食事をとるようにします。これからの季節ならタラ、サケ、ブリなどの魚類とブロッコリー、コマツナ、ホウレンソウ、ニンジン、キャベツなどの野菜類です。

【タンパク質を毎日取る】
タンパク質は肝細胞の再生のために重要な栄養素です。
毎食、主菜(タンパク質のおかず)を取りましょう。また、魚介、肉、卵、大豆製品をバランスよく取ることも大切です。

【アルコールはできるだけ控える】
アルコールの取りすぎは肝臓に負担をかけます。
アルコールの摂取量を控えるとともに、週に1〜2日、休肝日を設けて肝臓を休ませることが大切です。

【ビタミンをしっかり取る】
肝臓で3大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)の代謝が活発に行われます。
代謝にはビタミンのサポートが欠かせません。

【3食規則正しく取る】
1日3回の食事をできるだけ規則正しく、均等の量に分けて食べると、肝臓に負担をかけません。
夜遅い飲食や朝食抜き、ドカ食いなどの不規則な食生活は肝臓に負担をかけます。