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今月のくすり問答


薬の飲み方Q&A その108     (平成28年6月号)
Q  骨折の原因となる骨粗しょう症は薬で予防できますか?

   骨がスカスカになり、もろくなる「骨粗鬆症」による骨折が、高齢者の寝たきりに繋がり、社会問題となっています。
若い時からの食事・運動が大切ですが、性別・年齢・状態に応じた種々の薬で予防することができます。



 ◆  1.骨粗しょう症とは  ◆ 

高齢者にみられる特別な病気ではありません。
骨粗しょう症は、骨がスカスカになり、もろくなる病気です。
骨がスカスカになると、わずかな衝撃でも骨折しやすくなります。
しかも骨全体が弱まっているため、折れてしまった骨が元に戻るまでに時間がかかるようになってしまいます。
骨折が原因で日常生活行動が低下したり、他の病気を合併したり、さらには寝たきりになり、死亡のリスクを上げることが大きな社会問題となっています。

「骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015年度版」によると、我が国の骨粗しょう症の患者さんは女性が約980万人、男性が約300万人、合計1280万人と推定されています。
高齢化社会に伴い、骨粗しょう症になる人の割合はさらに高くなっていくと考えられています。



 ◆  2. ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)とは  ◆ 

骨、関節、筋肉といった運動器の機能が加齢とともに衰えて、「立つ」「歩く」といった動作が困難となり、「要介護」や「ねたきり」になる危険性が高い状態のことです。

ロコモの三大原因は「骨粗しょう症などの骨の病気」「筋力の低下」「バランス能力の低下」です。
国は、健康寿命延伸のため「ロコモティブシンドローム」という言葉の普及と、その予防に取り組んでいます。
骨粗しょう症の予防はロコモティブシンドロームの予防となります。



 ◆  3.骨粗しょう症の症状  ◆ 

骨粗しょう症になり、骨が弱くなることで次のような症状が現れてきます。

@腰、背中の痛み:前にかがんだとき、歩いたとき、寝返りを打ったとき、静かにしている時など様々な現れ方があります。
A骨折:太ももの付け根、手首、背骨、肋骨などが骨折しやすくなります。
B脊椎変形に伴う症状:身長が低くなったり、前かがみの姿勢になり転びやすくなったりします。胃がおされるため食欲がなくなる、食べた物が喉につかえる、などの胸やけ症状が出ることもあります。
急に起き上がれない、長距離歩けない、上を向いて安眠できないということも起こります。



 ◆  4.骨粗しょう症の原因  ◆ 

骨粗しょう症は原因によって次のタイプに分けられます。

@原発性骨粗しょう症
遺伝子や生活習慣(食事、運動、喫煙、飲酒)、加齢や妊娠などによって生じるタイプです。
女性は閉経後に骨密度が急激に減少するため、骨粗しょう症になる人の割合が高くなります。
男性は女性よりは少ないのですが、加齢とともに腸管からのカルシウム吸収が低下するため、70歳を過ぎると骨粗しょう症になる人の割合が高くなります。

A続発性骨粗しょう症
特定の原因によって生じるタイプです。
原因としては甲状腺疾患、糖尿病、慢性腎臓病、肝臓病、リウマチ、胃切除、ある種の薬剤の使用などが知られています。
骨量が減少しやすい薬剤としてはステロイド、ホルモン治療薬の一部、抗うつ剤の一部などがあります。



 ◆  5.骨粗しょう症の検査と診断  ◆ 

骨粗しょう症が見つかるのは、検診の場合が多いようです。
これは骨粗しょう症の初期は症状がないことが多く、病院などに行くことが少ないためです。
まずは検診を積極的に受けることをおすすめします。
多くの自治体では女性を対象に骨粗しょう症検診の助成をしています。
例えば松本市では30歳以上の女性対象に骨粗しょう症集団検診と、40〜70歳の女性対象に5年ごとに医療機関での検診を受けられる助成が、塩尻市では35〜70歳の女性が5年ごとに骨いきいき健診を受けられる助成があります。
お住いの自治体に確認しましょう。

【 @ 検 査 】
≪X線検査≫
骨が折れたり、つぶれたり変形していないか、ほかの病気と区別するために撮ります。

≪骨量(骨密度)測定≫
DXA(デキサ)法:2種類のX線を背骨、太もも、手首などにあてて、骨量を測ります。
超音波法:かかとやすねに超音波をあてて骨量を測ります。
P-QCT法:コンピュータ断像撮影で手首の骨などの骨量を測ります。

≪尿や血液検査≫
ビタミンKの不足状態や骨代謝マーカーで骨の新陳代謝の状態などがわかります。また骨粗しょう症以外の病気の見分けにも用います。

【 A 診 断 】
問診で骨粗しょう症に関する色々なことを医師から聞かれます。
自分の病歴や生活習慣を説明できるようにあらかじめ整理しておくとよいでしょう。
医師は問診と検査結果から総合的に骨粗しょう症か他の病気かを判断します。



 ◆  6.治療法  ◆ 

食事療法、運動療法、薬物療法の3点で治療を行います。
食事で十分なカルシウムを摂る、運動をする、日光を浴びることが重要で、これらの生活改善と並行して薬による治療も行います。また理学療法や神経ブロック、手術などを検討する場合もあります。

@食事療法
日常生活における骨粗しょう症予防のための食事療法の基本的な考え方は栄養素をバランス良く摂ることです。またカルシウムは1日700〜800mg以上の摂取が必要です。カルシウムの吸収をよくするためにビタミンDの多い食品を組み合わせることも大切です。

A運動療法
運動習慣を身につけ、適度に骨に負担をかけてあげることが、骨密度を保ち骨折を予防するのに役立ちます。
また屋外に出て日光に当たることで皮膚から体内へのビタミンD産生を促すことができます。
散歩や買い物に行くなど、こまめに体を動かし、日光に当たることを心がけましょう。

B薬物療法
骨密度が大幅に減少している方は、生活改善だけで骨密度を増やすのには無理があります。そこで、少しでも効果を高めるため、薬による治療も行います。

症状や年齢、性別、タイプによって医師が適切な薬を選びます。原発性骨粗しょう症には骨粗しょう症治療薬を使います。2種類以上の薬を併用する場合もあります。
続発性骨粗しょう症に対しては原因疾患の治療や原因薬剤の中止を原則としますが、骨粗しょう症治療薬を追加する場合もあります。痛みがある場合は鎮痛剤による対処療法をします。
いずれも正しく使わないと効果が見られませんし、薬には副作用もありますので、服用する際にはしっかり説明を受け、注意を守ることが大切です。
また骨粗しょう症治療の薬は、患者さんの5割近くがきちんと服用できていないという報告もあり、少しでも患者さんが服用しやすいように、服用間隔や剤型に工夫が加えられた薬の開発が進んでいます。


◆ 主な薬剤の特徴 ◆ 

カルシウム量を増やす薬
<カルシウム薬>
 カルシウム補給を目的とします。
 主な薬剤名:アスパラギン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、乳酸カルシウム
 投与法:内服
 副作用:便秘、胃部不快感、高カルシウム血症、動脈硬化

<活性型ビタミンD3薬>
 カルシウムの腸管からの吸収を助けます。骨の新陳代謝も調整します。
 主な薬剤名:アルファカルシドール、カルシトリオール、エルデカルシトール
 投与法:内服、静脈注射
 副作用:胃部不快感、吐き気、高カルシウム血症

<ビタミンK2薬>
 カルシウムが骨に吸収されて新しい骨を作るのを助けます。
 ワルファリンとの併用は禁忌です。
 主な薬剤名:メナテトレノン
 投与法:内服(脂肪分と共に吸収されるので、食直後に)
 副作用:胃部不快感、吐き気

骨の形成に働く薬
<副甲状腺ホルモン(PTH)>
 強力に骨形成を促進する薬で、骨折の危険度の高い方に使います。
 主な薬剤名:テリパラチド
 投与法:皮下注射(1日1回自分で注射します・使用は24ヶ月まで)
      静脈注射(週1回医療機関で注射してもらいます・使用は72週まで)
 副作用:胃部不快感、吐き気

骨の破壊を防ぐ薬
<ビスホスホネート薬>
 骨が破壊されるのを防ぎ、骨形成する効果の高い薬です。
 主な薬剤名:エチドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸
 投与法:内服、静脈注射、点滴
     内服薬には連日、週1回、月1回のタイプがあります。
     また飲みやすいゼリータイプもあります。
     内服薬は食事や水分の影響を受けて吸収率が低下したり、
     胃腸に刺激を与えたりしやすいので、起きてすぐ多めの水で服用し、
     30分間は横にならず、水以外の飲食を避けます。
     ミネラル多めの硬水での服用は避けてください。
     医療機関で月1回、注射をしてもらう方法もあります。
 副作用:胃部不快感・吐き気(内服)、発熱、関節痛
     長期服用で太ももの骨折や、あごの骨の壊死が起こることがあります。
     歯科治療をするときには医師・歯科医師とよく相談してください。

<女性ホルモン薬>
 女性ホルモンが原因の骨粗しょう症に有効です。
 更年期症状を軽くし、併せて骨粗しょう症を治療します。
 乳がん、婦人科検診が必要になります。
 主な薬剤名:エストリオール、結合型エストロゲン、エストラジオール
 投与法:内服、貼り薬、
 副作用:血栓症、乳房違和感、不正出血

<SERM>
 骨に対しては女性ホルモンと似た作用があり、骨密度を増加させますが、
 骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。
 主な薬剤名:ラロキシフェン、パセドキシフェン
 投与法:内服
 副作用:血栓症、視力障害

<カルシトニン薬>
 骨の破壊を抑える薬ですが強い痛み止め効果があり、骨粗しょう症による背中や腰の痛みに使います。
 主な薬剤名:エルカトニン、サケカルシトニン
 投与法:筋肉注射
 副作用:ほてり、めまい、吐き気、過敏症

<抗RANKL抗体薬>
 骨を壊す働きを強力に抑え、骨密度を上昇させます。
 主な薬剤名:デノスマブ
 投与法:皮下注射(6か月に1回医療機関で注射してもらいます)
 副作用:低カルシウム血症
 カルシウム薬とビタミンD薬を併用します。




 ◆  7.予防法  ◆ 

@タバコ、コーヒー、スナック、アルコールなどは骨量を減らします。
 嗜好品の摂りすぎに注意しましょう。
Aやせすぎると骨量も低下するので、無謀なダイエットはやめましょう。
B成長期から運動・食事に気を付け、骨量を十分に増加させることが大切です。