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今月のくすり問答


薬の飲み方Q&A その116     (平成29年2月号)
Q 肌が乾燥していると、かゆみを感じるのですか?

  
寒い時期のかゆみの原因は肌の乾燥によるものが多いです。
日ごろからこまめに保湿剤等を塗るなど、肌の乾燥を防ぐための工夫が大切です。




 ◆  『肌の構造』  ◆ 

皮脂膜:
角質細胞が集まって角質層が構成され、その一番外側に皮脂膜という天然のバリアがあり、外からの刺激から肌を守り、同時に水分の蒸発を防いでいます。

セラミド:
角質細胞間脂質と言う脂肪成分です。
角質細胞の隙間を埋める接着剤であり、同時に水分を貯える役割があります。

天然保湿因子:
皮膚表面に水分を閉じ込めています。


≪健康皮膚≫
角質細胞と角質細胞の間に角質細胞間脂質がぎっしりとつまっていて、すき間がみられません。
皮脂膜も保たれ、天然保湿因子も十分に存在しています。



≪乾燥皮膚≫
角質細胞がはがれてすき間ができ、水分が逃げやすい状態です。
皮脂膜や天然保湿因子も減少しています。



 


 ◆  冬のかゆみの原因は?  ◆ 

冬に多いかゆみの原因は乾燥です。
冬は空気が乾燥するので、皮膚の水分も蒸発しやすくなりますし、皮脂の分泌も少なくなり、バリアをつくる能力も低下します。
また、寒さで新陳代謝が低下し、肌を守る機能が低下します。

冬だけでなく、夏もエアコンや扇風機の風で、実は肌が乾燥していることが多いのです。お子さんの肌も意外と乾燥しています。

肌が乾燥すると、肌の表面がひび割れ、角質細胞がはがれ、そこから肌の中にいろいろな物が入り込んでかゆみが起こります。
掻くとひび割れがさらにひどくなり、ますますかゆくなります。

また、ひび割れから水分がどんどん奪われ、皮膚バリアが壊れ、かゆみを伝える神経が伸びてきて、更にかゆみを感じやすくなってしまいます。


 ◆  「かゆい時」 ◆ 

どうしても我慢できない時は、かるく叩く、爪をたてずさする、冷やす、熱いタオルで拭くなどの方法で皮膚を傷つけないようにしましょう。
爪は短く切り、やすりで角をとっておきましょう。
かゆみを感じはじめたら、何かして気を紛らわすことも効果的です。


 ◆  「乾燥肌の対策」  ◆ 

保湿が基本です。肌は一回ひび割れてしまうと、元に戻すのが大変です。
皮膚の乾燥を防ぐためには保湿剤も重要です。保湿された皮膚はバリア機能が補強され、かゆみを伝える神経の働きも抑えることができます。
かゆみ以外の肌トラブルも少なくなります。日々の生活の工夫が重要です。



【 保湿剤 】
実は保湿剤を正しく塗れていない方が意外と多いのです。
全身にたっぷりに塗ることが大切です。

保湿剤には皮膚表面にラップをするようにして水分が蒸発するのを防ぐタイプと、皮膚にしみ込んで水分を保つタイプがあります。
皮膚にしみ込む外用剤には油脂の含有量が少ない順に、ローション、クリーム、軟膏があります。
乾燥の程度が強いほど油脂を多く含むものが向いています。
また冬は軟膏、夏はローションなどと季節に合わせた調節も必要です。
その他ジェルやスプレーもあり、用途により使い分けができます。
香料やアルコール、メンソールが入ったものは、かえってかゆみを引き起こしてしまうこともありますので、成分表示を良くみて選びましょう。



<皮脂膜タイプ>
代表はワセリンです。ワセリンにも粒子の細かさで何種類かあります。
ワセリンには治療効果はありませんが、保湿性に優れ、唇にも使えますのでリップクリームとしても有用です。肌に塗る場合には手のひらで温めて柔らかくしてから塗ると効果的です。

<皮膚にしみ込むタイプ>
主に「尿素」と「ヘパリン類似物質」と「セラミド」があります。
「尿素」を含むものは、肌を若干溶かし古い角質を除く効果がありますが、ピリピリした刺激を感じる場合もあります。
「ヘパリン類似物質」は血行を良くし、肌の新陳代謝力、水分保持力に優れています。稀に肌がほてったり、赤くなったりすることがあります。
「セラミド」は医薬品ではありませんが、細胞間脂質であり、水分保持力に優れています。市販品を上手に利用しましょう。






 ◆  「治 療」  ◆ 

<ステロイド塗り薬>
湿疹や掻き壊しがある場合は、ステロイド外用剤を塗って炎症を治療することがあります。
湿疹や掻き壊しが治ったら、再発しないように保湿剤に切り替え予防します。

<かゆみ止め塗り薬>
かゆみの伝達を遮断する成分が入った塗り薬を使うこともあります。

<飲み薬>
強烈な痒みがおさまらない場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、抗炎症薬、その他基礎疾患がある場合はそれに合った薬を飲むことがあります。
眠くならない成分が主流ですが、痒みで眠れなかったり、夜中に掻きこわしたりしてしまう場合は、あえて眠気が起きる成分を飲む場合もあります。






 ◆  「外用剤の塗り方」  ◆ 

指先から第一関節まで軟膏を出した量を1(ワン)フィンガーチップユニット(FTU)といい、この量を手のひら2枚分の面積に塗ります。
ローションなら1円玉大が目安です。塗った直後は、ティッシュが付くくらいが理想で、意外とベトベトしている感じがすると思いが、これが適量です。

手のひらで優しく丁寧に塗りましょう。強くすり込まないようにします。
腕や足に塗るときは保湿剤を上から下にのばした後、しわに沿って水平方向にクルクルと肌になじませます。
自分で背中に塗るには、ガーゼを巻いた孫の手などの先に保湿剤をつけて、背中に薄く延ばすようにします。頭皮にはローションタイプか、軟膏なら手で柔らかくしてから、髪の毛を分けて、指の腹で塗りましょう。

保湿剤は1日に何回塗っても良いのですが、皮膚が水分を吸収していて、蒸散がはじまるまでの入浴後5分以内の塗るのが効果的です。
脱衣所でローションタイプの保湿剤を全身に塗り、部屋に行ってから、特に乾燥しやすい腰回り、すねに軟膏タイプを重ね塗りするもの効果的です。

湿疹や掻きこわしに2種類の外用剤を重ねて塗る場合は、まず保湿剤を塗り、その上から湿疹や掻きこわしのある部分にだけ、ステロイドなどの治療薬を重ねます。









 


 ◆  「日常生活で注意すること」  ◆ 

「肌着・洋服・寝具」
肌に直接触れる下着や寝具は刺激の少ない木綿や絹など天然素材で優しい肌触りのものを使いましょう。寝具で肌に触れる部分には天然素材のカバーをおすすめします。

「入浴」
かゆみを悪化させる生活習慣の中で、最も多いのは誤った入浴方法です。
熱いお湯に長く浸かり、石鹸をつけてゴシゴシ洗うことは、肌にとても良くないことです。

熱すぎるお湯は皮脂が溶け出しバリア機能が失われますし、熱いお湯が刺激になってかゆみが増すこともあります。40度位のぬるめのお湯で長湯は避けましょう。保湿成分や炭酸が入った入浴剤も効果的です。ただし、イオウ入りは肌を乾燥させるので避けましょう。

身体をゴシゴシこすり洗いすると角質層が壊れて、ますます肌がひび割れてしまいます。
石鹸も皮脂を奪ってしまうので、顔と陰部以外は、1、2日おきの使用で十分です。
手のひらか、天然素材の柔らかいタオルでよく泡をたて、決してゴシゴシこすらず、汚れを浮かせて流すようにしましょう。

湯上り後は皮膚から水分がどんどん蒸発し5分位で乾燥が始まるので、脱衣所に保湿剤を用意しておき、肌を拭いたらすぐに使いましょう。拭くときも、塗るときも優しく肌に触れましょう。

「暖房」
身体を外から温めると、その熱でかゆみがおこります。重ね着や靴下で体温を逃さないことが必要です。
こたつに入ったり、電機シーツなどを使うことでも乾燥が進むので、低めの温度で短時間の使用を心がけましょう。布団に入るまでに電気シーツなどで寝具を温め、布団に入ったら電気を切ることをおすすめします。

「部屋の保湿」
部屋の湿度も大切です。50%くらいの湿度が理想です。
加湿器を使ったり、洗濯物を干したり、濡れタオル1枚かけておくだけでも効果があります。

「食事」
皮膚の血行を良くし細胞の酸化を防ぐビタミンE、肌の健康にかかせないβカロテン、肌のうるおい成分の植物油、細胞をしなやかに保つ魚脂などを、組み合わせてバランスよく食べるようにしましょう。

「お酒や刺激物」
お酒、コーヒー、唐辛子などのアルコールや刺激物は肌のかゆみを引き起こしますので、控えめにしましょう。

















 ◆  「乾燥肌を放っておくと」  ◆ 

皮膚がカサカサして白い粉をふいたようになり、皮脂欠乏性湿疹、貨幣状湿疹、掻破性湿疹などになっている場合があります。
湿疹ができたり、乾燥肌対策をしても良くならない場合は、医療機関を受診しましょう。
その際、いつ、どこが、どのくらいかゆいのか、どんな風になるのかをまとめておくと医師に伝えやすくなります。