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今月のくすり問答


薬の飲み方Q&A その123     (平成29年9月号)
Q 傷の手当の方法を教えてください。

  
傷の手当の方法は依然と大きく変わり、『消毒しない・乾かさない処置』が主流となっているようです。
よく洗ってから、専用の傷パッドなどを利用し適切に手当すれば、痛みも軽く、治りも早く、痕も目立たなくなります。



 ◆   1.傷が治る仕組み     ◆ 

人の体には、元々傷を治す仕組み(自然治癒力)が備わっていて、ケガをすると、どんな人でも自らその傷を修復しようという働きが起こるのです。

血液中の血小板に止血作用があり、白血球などが浸出液となって傷の感染を防ぎ、新しい皮膚を再生します。
ケガにより皮膚の一番上の表皮が傷ついても、その下の真皮は血流が豊富なので、浸出液を出すことにより、少々ばい菌がついても感染を防ぎ、皮膚を再生していきます。
ところが乾燥してカサブタができると、これは皮膚のミイラのようなものなので、再生機能は失われています。
ジクジクした湿潤状態こそが、自分の自然治癒力を最大限に発揮できる状態なのです。



 ◆   専門医療機関の受診は   ◆ 

・傷口が深い、大きい
・ごみが取れない
・痛みが増す
・血が止まらない
・化膿している(傷の周りが赤い、黄色い膿がでている、熱や腫れがある、臭いがある)
・動物にかまれた

などの場合は外科、皮膚科など専門の医療施設を受診してください


 ◆  湿潤療法(モイストヒーリング)   ◆ 

傷の手当の方法は以前と大きく変わりました。

以前は傷口を消毒して、ガーゼを当てたり、時には何も当てずに乾かし、かさぶたができ、それが剥がれれば治ったとしていました。
ところがこの方法は消毒する時の痛み、傷の痛み、ガーゼを交換する時の痛みが強く、また治るまでに時間がかかる上に、せっかく再生した新しい皮膚をガーゼ交換の度に剥がしてしまい、更に時間がかかりますし、傷あとも残ってしまいます。

今は傷が治る仕組みの研究が進み、傷口は消毒せず、乾燥させない処置=湿潤療法(モイストヒーリング)を行うことが多くなっています。
乾かさないことで、傷の痛みは軽くなり、治りも早く、傷あとも目立たなくなります。
食品ラップを使う方法もありますが、専用の傷パッド(被覆材・ドレッシング材)が販売されていて便利です。
ケガをみても慌てず、落ち着いて対応しましょう。

やけど、あかぎれ、靴ずれには応用できます。
ニキビ、化膿している、すでにカサブタができている、すでに乾いている、ケガをしてから1日以上経っている場合は湿潤療法はできません。




≪湿潤療法(モイストヒーリング)手当の手順≫

1.手が傷に直接触れないようにします。
血液による感染防止のためです。人の傷を手当てする場合は、ビニール手袋(使用後は捨てます)か、ビニール袋などで手を覆い、直接傷に触れないようにします。

2.出血していたら止血します。
切り傷、すり傷は出血していたら圧迫して止血します。
傷をガーゼやハンカチなどで抑え、可能なら心臓より高くして圧迫します。
紐などで腕や脚のつけ根を縛るのは、血管や神経を傷つける危険があるので避けましょう。

3.傷は水道水で洗います。
傷は水道水でしっかりきれいに洗います。これがとても大切です。
少し痛いかもしれませんが、しつこいくらいに丁寧に洗いましょう。
これで傷口のごみが流され、感染の危険も少なくなります。

屋外で水道水が無い場合は川や湖の水は使わず、ペットボトルのお茶などを使いましょう。
洗った後は、清潔な布で傷周りの水分を拭き取ります。



4.消毒はしません。
湿潤療法の場合は消毒薬は使いません。
消毒液は細菌も弱らせますが、周りの正常な細胞も殺してしまい、また浸出液を取り除いてしまうので、傷の回復力が弱くなることがわかってきました。
また傷にしみて、激しい痛みも感じます。
消毒薬を使った場合は、もう一度きれいに洗い流しましょう。

5.傷には、直接ガーゼを当てず、専用の傷パッド(被覆材・ドレッシング材とも呼びます)で覆います。食品用ラップで対応することもできます。
傷口は乾かさず湿潤状態にすることが最も大切です。
滲出液で覆った状態を保つため、専用の傷パッド(被覆材・ドレッシング材)で保護します。
この時、軟膏などの傷薬は塗らないようにします。塗った場合は洗い流しましょう。

食品用ラップで代用することも出来ます。
この場合は傷に白色ワセリンを塗ったり、ラップの上からガーゼや包帯を当てて保護することもあります。

傷パッドが傷を乾かさないようにし、余分な浸出液を吸い込み、適度な湿潤環境を作ることで傷の痛みを軽くし、治りも早まり、また傷あとも目立たなくなります。
以前のように傷にガーゼを直接当てて、交換の際、新しくできた薄皮を引っ張り剥がしてしまうことや、その時の痛みもありません。

6.ラップや専用パッドの交換。
専用の傷パッドの場合、2〜3日は毎日交換する必要はなく、浸出液が溢れてきたり、汚れてきたら交換します。

交換の時は再生した皮膚を引っ張らないように静かにゆっくり剥がし、傷部分を水道水でよく洗ってから、新しい傷パッドを貼ります。
食品ラップで代用した場合は、毎日交換しましょう。





 ◆   専用パッド(医療用被覆材・ドレッシング剤)の種類   ◆ 

ハイドロコロイドや透明フィルムなどがあります。

1.ハイドロコロイド(親水ポリマー)・ポリウレタンフォームとは:余分な浸出液を親水ポリマーが吸い取り、最適な湿潤環境にします。外側は防水機能があるので、外の水分が傷部分に入ることはありません。

2.透明フィルム:粘着力のある透明なフィルム材です。そのままが傷に貼ることも、ガーゼの上から貼ることもできます。



 ◆   湿潤療法のまとめ   ◆ 

用意するもの:ビニール手袋(ビニール袋でも可)、ガーゼ、傷パッド
1.手当する人は、ビニール手袋(ビニール袋)で手を覆います。
2.水道水で傷をきれいに洗います。
3.傷の大きさに合わせた専用のパッドを傷に当てます。
4.傷パッドの交換は2〜3日後に。

ラップで代用する場合:食品用ラップ、あれば白色ワセリン、固定用テープ。
1.手当する人は、ビニール手袋(ビニール袋)で手を覆います。
2.水道水で傷をきれいに洗います。
3.傷の大きさに合わせて切った食品用ラップを傷に当てます。
  白色ワセリンをつけて傷を覆うと、保湿効果と保護効果が高くなります。
4.上からガーゼを当ててテープで固定するか、包帯を巻き、ラップと傷を保護します。
5.ラップやガーゼの交換は毎日行います。



 ◆   最後に   ◆ 

違和感のある方もいるかもしれませんが、化膿に気をつけ、洗浄をしっかり行えば、実際に傷の治り方はとてもよくなっています。
ただし、不安の強い方や、行ってみても傷が治らなかったり、黄色く化膿してきたり、臭いが出てきた場合は、すみやかに医療機関を受診してください。