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今月のくすり問答


薬の飲み方Q&A その127     (平成30年1月号)
Q インフルエンザに効く薬はありますか?

  
インフルエンザA・B型両方に効果があるものとして、数種類のタイプの抗インフルエンザ薬があります。
いずれも発症2日以内の使用開始が効果的です。
対症療法として高熱に対しては冷却とともに、解熱薬を使います。



 ◆   インフルエンザとは    ◆ 

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こるウイルス性呼吸器感染症です。小児と高齢者で重症化しやすいとされています。
流行の規模は一定ではありませんが、毎年冬季に流行がみられ、学級閉鎖の原因や、高齢者施設における施設内流行の原因にもなります。

インフルエンザはヒトの鼻咽頭で増殖したウイルスが、飛沫感染でほかのヒトの鼻咽頭の細胞に感染して発症します。


 ◆   症状   ◆ 

いずれの型のインフルエンザも1〜3日の潜伏期をへて、悪寒を伴う高熱、全身倦怠感を伴って急激に発症します。
鼻汁、咳き、咽頭痛などの呼吸器症状や、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状を伴うことが多く、頭痛、関節痛も現れます。

筋炎を起こすと筋肉痛が生じ、下肢の場合は歩行困難になることがあります。
症状の程度・持続期間は、流行ウイルスの種類、年齢、過去の罹患状況などによってさまざまですが、合併症がない場合、1週間〜10日以内に軽快します。
発症した場合の重症度は、ウイルス側の要因(前回の流行からの期間やウイルスの変異の度合い)と、個体側の要因(感染歴や免疫状態)などによって決まります。

乳幼児は初感染であることが多く、成人に比べて重症化しやすく、また高熱による熱性けいれんを起こすことがあります。
細菌性の肺炎や中耳炎の合併があると高熱が続きます。






 ◆   検査と診断   ◆ 

咽頭ぬぐい液や鼻汁材料を用いた、インフルエンザの抗原検出キットで10〜15分の短時間に判定することができ、A・B型の判別も可能です。

血清反応による診断では、発症時と2〜4週後のペア血清でCF(インフルエンザ共通抗原)、HI(型特異的抗原)抗体価の有意な上昇でわかります。

臨床ウイルス学的にはウイルスの分離を行い、流行株の抗原的性状を解析します。
 


 ◆   治療の方法   ◆ 

対症療法が主体になります。
高熱に対しては冷却とともに、アセトアミノフェン(カロナール)などの解熱薬を使います。

呼吸器症状に対しては鎮咳去薬、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬などを、消化器症状に対しては整腸薬や止痢薬を用います。

細菌性の肺炎などを合併している場合は、抗生剤を使用します。

水分の補給に努め、脱水にならないように注意します。

特異的な治療法として、抗ウイルス薬があります。
A型に対してはアマンタジン(シンメトレル)がありましたが、近年、耐性ウイルスが出現したため使用されなくなりました。

A・B型両方に効果があるものとして、ノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル、リレンザ)が用いられていますが、近年タミフル耐性のAソ連型ウイルスが出現し、世界中に広まりました。
いずれも発症2日以内の使用開始が効果的です。






 ◆   抗インフルエンザ薬   ◆ 

ノイラミニダーゼ阻害薬
インフルエンザウイルスが放出される時に、「ノイラミニダーゼ」と呼ばれる酵素によって、「細胞からインフルエンザウイルスが切り離される過程」が進むのです。
そこで、ノイラミニダーゼの働きを邪魔すれば、インフルエンザウイルスが切り離されることを抑えることができ、インフルエンザウイルスを細胞内に閉じ込めることができるのです。
このような作用をする抗インフルエンザ薬を「ノイラミニダーゼ阻害薬」と言い、「タミフル」「リレンザ」「イナビル」「ラピアクタ」の各薬がそれにあたります。



RNAポリメラーゼ阻害薬
「ノイラミニダーゼ阻害薬」と少し作用の異なる薬として「RNAポリメラーゼ阻害薬」という種類の薬があります。
動物の細胞の核の中に入ったインフルエンザのRNAが複製される時に重要な働きをする酵素にRNAポリメラーゼと呼ばれるものがあります。
RNAポリメラーゼの働きを邪魔(阻害)すれば、インフルエンザウイルスの遺伝子(RNA)を新しく作れないため、インフルエンザウイルスが増えるのを抑えることができます。
このような作用をする抗インフルエンザ薬を「RNAポリメラーゼ阻害薬」と言い、「アビガン」という薬がそれにあたります。
アビガンはインフルエンザウイルスの増殖自体を抑制する作用があるため、薬の投与開始が遅れたとしても効果を示すことが特徴です。

タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害薬が効かないインフルエンザウイルス(ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルス)や鳥インフルエンザウイルスに対しても、アビガンは有効であることが分かっています。
ただし、新型インフルエンザの大流行(パンデミック)の時だけに使用するように制限がかけられています。

従来の抗インフルエンザ薬とは異なる作用をする画期的な薬であるため、インフルエンザウイルスがアピガンに対する耐性を持たないようにコントロールしているのです。
なお、アビガンは動物などを用いた試験で胎児に奇形をもたらす作用が確認されています。そのため、妊婦への投与はできません。





 ◆   よく処方される抗インフルエンザ薬   ◆ 

上で説明したように抗インフルエンザ薬は作用の仕方によって2種類に分類されますが、一般に処方される薬はノイラミニダーゼ阻害薬であり、現在一般的に処方されている商品としては以下の4種類あります。

商品名薬品名対応する型摂取方法投与時期副作用
タミフルオセルタミビルリン酸塩A型
B型
両方
経口発症後48時間以内吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
リレンザザナミビル水和物吸入下痢、発疹、吐き気、動悸
イナビルラニナミビルオクタン酸エステル水和物吸入下痢、悪心、胃腸炎、蕁麻疹
ラピアクタペラミビル点滴下痢、白血球減少、嘔吐、蛋白尿


■タミフル(オセルタミビルリン酸塩)■


A型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ効果があります。
口から飲むタイプの薬です。
成人と1歳以上9歳以下の子供に処方されます。
10歳以上20歳未満に対しては、下に書いた異常行動を避けるために厚生労働省より処方を控えるよう通達されています。
通常はカプセル剤ですが、子供の場合は粉薬が一般的です。
症状が出始めたら48時間以内に服用するのが効果的です。
48時間を超えた患者には効き目が薄いので、無駄な処方がされないよう注意が必要です。
副作用は、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状などが主です。



■リレンザ(ザナミビル水和物)■


A型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ効果があります。
5歳以上であれば利用できます。
吸入薬です。専用の吸入器を使って1日2回を5日間にわたって吸入します。
たとえ熱が下がったとしても、ウイルスが体内に残っている可能性が高いので、再発防止や感染拡大防止のためにも、5日間の使用は守りましょう!
インフルエンザウイルスが増殖する気道に粉薬を直接届けることができるので、すぐにウイルスの増殖を抑えることができます。
症状を早く緩和するために、最初の1回はできるだけ早く吸入します。
病院や薬局で薬を受け取ったら、その場ではじめの1回分を吸入するのが良いです。
副作用としては下痢、発疹、吐き気、動悸などが報告されています。



■イナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)■


A型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ効果があります。
吸入薬です。
イナビルの最大の特徴は、1回の吸入だけで治療が終わることです。
成人及び10歳以上の小児は2容器(計4箇所) 10歳未満の小児は1容器(2箇所) を吸入します。
吸入後の継続治療は必要ありません。

1回の治療で確実に薬を吸入する必要があるので、病院で医師や看護師の指導を受けながら吸入した方が良いです。
特に小さな子供の場合は、うまく吸入できているか保護者も注意して観察しましょう。
副作用は、下痢、悪心、胃腸炎、蕁麻疹などが報告されています。


■ラピアクタ(ペラミビル)■


点滴注射薬です。
カプセルを飲んだり粉薬を吸入したりするのが困難な患者さんにも投与できることが特徴でありメリットですが、逆に医療機関でなければ投与ができずデメリットでもあります。

1回15分〜30分ほどの点滴で、タミフル2錠を5日間継続するのと同じ効果を得られるので注目されています。
大人の場合、300mgを15分以上かけて点滴します。重症化する可能性が高い場合は1日1回600mgを15分以上かけて点滴します。
子供の場合は、1日1回10mg/kgを15分以上かけて点滴し、1回の点滴上限は、600mgまでに制限されています。

ただし、臨床実験がない状態で承認を受けた薬であるため、実験データが不足しており、特別な理由がない限り子供に投与するケースが少ないようです。
基本的には一度の投与で治療を完結させますが、症状が重い場合には1日1回600mgを何日かに分けて投与することもあります。
発症から48時間以内に投与した場合に有効です。
副作用は、下痢、白血球減少、嘔吐、蛋白尿などが認められています。




 ◆   抗インフルエンザ薬の重大副作用〜異常行動   ◆ 

タミフルに関する報道が有名ですが、抗インフルエンザウイルス薬を使用した場合に、異常行動を起こす例が報告されています。

異常行動の発生は、タミフルの他にリレンザ、ラピアクタ、イナビル、シンメトレルでも認められています。

≪異常行動の例≫
異常行動としては以下のような行動をすることがあります。下のような行動が見られたらすぐに医療機関に相談しましょう。
 ◆突然立ち上がって部屋から出ようとする。
 ◆興奮状態となり、手を広げて部屋を駆け回り、意味のわからないことを言う。
 ◆興奮して窓を開けてベランダに出ようとする。
 ◆自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない。
 ◆人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す。
 ◆変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る。
 ◆突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする。

≪異常行動の発生しやすい条件≫
年齢や性別、時期などが発生頻度に影響することが厚生労働省の調査からわかっています。
 ◆10歳前後の小児において発生しやすい(平均9,44歳)
 ◆男性の割合のほうが多い(男性65%、女性35%)
 ◆眠りから覚めて直ぐが起こりやすい(眠りから覚めて直ぐ76%)
 ◆特に発熱後1日以内、2日目に起こりやすい(1日以内:25%、2日目:46.43%)

≪異常行動への対応方法≫
発熱後の2日間は、子供が一人きりにならないように、保護者がしっかり見守りましょう。