
その161(2020年11月号)
- 授乳中ですが、お薬を飲んでも大丈夫ですか?
- 授乳中でもお薬を飲むことは可能です。服用時間と授乳のタイミングを工夫することで赤ちゃんへの影響を減らすこともできます。しかし、赤ちゃんに影響があるお薬も一部ありますので、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。
授乳中にお薬を飲むことって大丈夫?
授乳中にお薬を飲んで良いのか、飲んだお薬は赤ちゃんに影響するのか、不安に感じる方はたくさんいるかと思います。妊娠中とは違って、基本的に授乳中の服薬が赤ちゃんに影響することは少ないと考えられています。しかし、一部赤ちゃんに影響を及ぼしてしまうお薬もありますので、きちんとした知識を身に付けておきましょう。
母乳栄養のメリットって?
母乳栄養には、どのようなメリットがあるのでしょうか。母乳栄養は栄養価が高いだけではなく、赤ちゃんの免疫力を高めたり、情緒を安定させたりする効果が期待できます。また、お母さんの子宮の回復を早め、産後の体重減少にも関与していると考えられています。
もちろん人工乳(ミルク)でも十分な栄養を摂ることは可能ですし、人工乳ならではのメリットもたくさんあります。
個々のライフスタイルに合わせて選択できると良いですね。

授乳中に服薬した時の赤ちゃんへの影響って・・・
ここからはお薬の授乳への影響について考えていきましょう。まず、授乳中の服薬による赤ちゃんへの影響は、妊娠中とは異なることを理解しましょう。
授乳中にお母さんが飲んだお薬が、赤ちゃんに影響するまでには、たくさんの過程を経るため、最終的に赤ちゃんに吸収されてしまうお薬の量は、お母さんが飲んだ量のごくわずかでしかありません。しかし一部のお薬では、赤ちゃんが吸収してしまう量が多いと言われているものもありますので、注意が必要です。
お薬を飲むタイミングも関係するの?
お薬を飲むタイミングを工夫することで、赤ちゃんへの影響を最小限にすることができるものもあります。例えば、解熱鎮痛剤であるロキソニン®錠は、一番効果の高い時間が内服後45分前後と言われており、2~3時間後にはお母さんの血液中のお薬の濃度はかなり低くなっているとされています。
この場合、お薬を飲んだ直後の授乳を控えることで、赤ちゃんへの影響を最小限におさえることができると考えられます。

お薬の種類によっては、1日中効果を示しているものもありますので、そのようなお薬は、授乳とのタイミングはあまり関係ないと考えられています。ご自身が飲んでいるお薬が、どのようなタイミングで飲んだら良いか迷った場合には、一度かかりつけの薬剤師にご相談ください。
具体的なお薬の影響って・・・?
では、実際によく使われるお薬の授乳中の影響についてみてみましょう。薬の種類 | 授乳中の使用について |
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解熱鎮痛薬 | 母乳中の濃度はごくわずかであり、授乳を避ける必要はないと考えられています。小児にもよく使用されるアセトアミノフェンが処方されることが一般的です。 |
貼付剤 | 湿布やテープなどの貼付剤では、母乳に移行するお薬の量はほとんどないと考えられています。 |
副腎皮質ホルモン (ステロイド) | 大量の副腎皮質ホルモン剤を投与する際には、少し注意が必要ですが、それ以外では母乳に移行するお薬の量は少ないと報告されています。 |
塗り薬 | 塗り薬が母乳に移行することはほとんどありません。塗った後に、直接赤ちゃんに触れる場合には、注意しましょう。 |
市販薬 | ほとんどのお薬は、授乳中に服用しても赤ちゃんへの影響は少ないと考えられています。一部の成分では、注意が必要なものもありますので、薬剤師にご相談ください。 |
最後に
日本のお薬の説明書(添付文書)には、ほとんどのお薬は授乳を避けるようにとの記載があります。インターネットなどで検索してみても、授乳を避けるべきと記載のあるものがほとんどです。適正なお薬の飲み方であれば、授乳中にお薬を飲むことは可能です。しかし赤ちゃんへの影響が心配で、処方されたお薬を自己判断でやめてしまう方や、母乳栄養をあきらめてしまう方がいるのが現状です。
お母さんの健康は、赤ちゃんの成長や健康につながります。お薬の自己中断や、我慢などせずに、かかりつけの医師や薬剤師に一度ご相談ください。
妊娠・授乳と薬に関する専門機関「妊娠と薬情報センター」のホームページにも、授乳中に使用できるお薬の一覧が掲載されておりますので、ぜひ参考にしてみてください。