
その163(2021年1月号)
- 慢性腎臓病と言われたのですが、風邪薬は飲めますか?
- 慢性腎臓病(CKD)とは、加齢や生活習慣病などが原因で腎臓の働きが低下した状態を言います。この様な方は、お薬の量を調節したり、腎臓への負担が少ない薬を選ぶ必要があります。詳しくは、医師・薬剤師にご相談ください。
腎臓の働き
健康な腎臓はソラマメのような形をしており、握りこぶしほどの臓器です。背中側の腰のやや上部に左右1つずつあります。腎臓中には1個に約100万個のネフロン(糸球体と尿細管)とよばれる血液のろ過装置があり腎臓で血液から腎臓は体の中で大きな役割を果たしています。
腎臓の主な働き
- 体液の調節:尿の量を調節し、体内の水分量を一定に保つ
- 老廃物の排泄:体内で発生した老廃物を尿として排泄する
- 電解質の調節:電解質(Na、K、Ca、Pなど)の濃度や量を調整する
- 血液のPHの調整:血液を弱アルカリ性に保つ
- ビタミンDの活性化:ビタミンDは腎臓で活性化され、Ca、Pのバランスを整え、正常な骨を維持する
- エリスロポエチンの分泌:赤血球の産生を促すエリスロポエチンを分泌する
- 血圧の調節:レニンというホルモンを分泌し血圧を調整する
腎臓の機能が低下すると起きる症状
- 水分が体にたまる:むくみ(浮腫)、高血圧、低ナトリウム血症、肺水腫
- 老廃物が体にたまる:尿毒症(食欲低下、吐き気、嘔吐、意識混濁、痙攣等)
- 電解質が体にたまる:高カリウム血症、高リン血症
- 血液に酸がたまる:呼吸が速くなり、電解質バランスが崩れる
- ホルモン異常:貧血、骨がもろくなる、高血圧
慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病(chronic kidney disease=CKD)は慢性に経過する腎臓病すべてを指します。CKDの原因にはさまざまなものがありますが、生活習慣病(糖尿病、高血圧など)や慢性腎炎が代表的でメタボリックシンドロームとの関連も深く、誰もがかかる可能性のある病気です。日本ではCKDの患者が約1,330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いると考えられ、新たな国民病ともいわれています。

CKDの症状
CKDは状態がかなり悪化しないと自覚症状が出てきません。病気が進行すると、夜間尿、貧血、倦怠感、むくみ(浮腫)、息切れなどの症状が現れてきます。具体的には、手の指、顔、足のすねや甲などのむくみや尿の変化などがあります。尿が異常に泡立っていたり、血が混じっていたりすれば要注意です。症状が自覚されるときには、すでにCKDがかなり進行している場合が多いといわれています。早期発見のためには、定期的な検査が有効です。

CKDの診断方法
下記の(1)(2)いずれか、または両方が3か月以上持続した状態のことをいいます。(1)尿検査、血液検査、画像診断などで腎障害が明らかである
(特に、0.15g/gcr以上のたんぱく尿が出ている)
(2)糸球体ろ過量(GFR)が60mL/分/1.73m²未満である
※GFR:糸球体ろ過量といい、腎機能を表す指標です。
1分間にろ過できる原尿(濾液)の総量。糸球体の老廃物を尿へ排泄する能力を示しており、値が低いほど腎臓の働きが悪いということになります。
GFRを調べるには、血液検査による血清クレアチニン値(Cr)という項目を用い、計算式によって求める数値である推算糸球体ろ過量(eGFR)を用いる方法などがあります。健康診断の検査項目に入っていれば、ご自分で確認することもできます。
CKDの病期(ステージ)
徐々に進行する慢性腎臓病(CKD)ですが、進行度に合わせた5段階のステージ(病期)があります。腎臓の機能を5段階のステージ(病期)に分けてとらえ、そのステージに応じた診療計画が立てられます。また重症度は蛋白尿(アルブミン)とeGFR値の組み合わせで判断されます。
CKDの重症度分類 原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3 糖尿病 尿アルブミン定量
(mg/日)
尿アルブミン/Cr 比
(mg/gCr)正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿 30 未満 30~299 300 以上 高血圧
腎炎
多発性囊胞腎
移植腎
不明
その他尿蛋白定量
(g/日)
尿蛋白/Cr 比
(g/gCr)正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿 0.15 未満 0.15~0.49 0.50 以上 GFR区分
(mL/分/1.73m²)G1 正常または高値 ≧90 G2 正常または軽度低下 60~89 G3a 軽度~中等度低下 45~59 G3b 中等度~高度低下 30~44 G4 高度低下 15~29 G5 末期腎不全
(ESKD)<15 重症度は原疾患・GFR 区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。CKD の重症度は死亡、末期腎不全、心血管死亡発症のリスクを緑のステージを基準に、黄、オレンジ、赤の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)
CKDの予防法について
食事療法や血圧管理、薬物療法などで腎機能の悪化を予防することができます。すでに治療されている方は、CKDを悪化させないため、しっかりと治療を継続することが重要です。また、かかりつけ医に専門の医療機関の受診を勧められたら、指示に従って必ず受診しましょう。CKDの治療の目的は、腎臓の働きが失われて透析が必要となったり、心血管疾患などの病気になるのを防ぐことです。CKDはこんな生活習慣は注意が必要です。
喫煙
喫煙は慢性腎臓病(CKD)の発症・進行に関与していると考えられCKDと関連する心血管病などさまざまな病気の危険因子でもあります。飲酒
適度の飲酒は、慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全の危険因子となりうるので注意しましょう。塩分摂取
血圧管理のため食塩、みそ、しょうゆなどの塩分の過剰な摂取を減らしましょう。また、塩分はパンや麺類、バター、ハムやかまぼこなどの加工食品、インスタント食品などにも多く含まれています。味付けや調理法を工夫して、減塩に努めましょう。運動不足
糖尿病や高血圧症の発症の原因ともなります。自分の体力や体調にあわせて、適度な運動を定期的におこないましょう。不規則な生活
過労を避け、睡眠を十分にとりましょう。ストレスもできるだけ減らしたいものです。持病の放置
高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある人は、医療機関を受診しきちんと管理をしましょう。CKDの予防には血圧の管理と尿検査が重要になります。家庭血圧計や尿試験紙も市販されていますので、ふだんから、家庭でもこまめに血圧をチェックし、定期的に尿検査をすることをお勧めします。

薬を服用する上での注意
CKDで腎臓の働きが低下していると、血液中の老廃物や不要物のろ過・排泄が十分にできなくなってしまいます。このため腎臓から排出される割合の多いお薬を飲む場合、通常の量ではお薬が効すぎたり、副作用が強く出たりする可能性が高くなるため、腎臓の働きに合わせてお薬の量を調節する必要ある場合があります。また、腎臓への負担の大きなお薬は避けた方が良い場合もあります。CDKの方は必ず医療機関受診時や薬局を利用される際には、そのことをお伝えください。
日ごろからかかりつけ医やかかりつけ薬剤師に飲んでもよい市販の薬剤やサプリメント・漢方薬などについて聞いておきましょう。
注意したい主な市販薬の種類
・かぜ薬・解熱薬
・鎮痛薬
・H2ブロッカー
・カルシウムやビタミンD剤
腎臓の働きにより飲む量の調節が必要な主な医療用医薬品
・直接トロンビン阻害剤・抗菌薬
・抗ウイルス薬
・高脂血症治療薬
・糖尿病治療薬(DPP4阻害剤)
・抗アレルギー薬
・H2ブロッカー
・抗パーキンソン病薬
・抗てんかん薬
・抹消神経障害性疼痛治療薬
・肝炎治療薬
