
その203(2024年5月号)
- 薄毛に悩んでいます。お薬はありますか?
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飲み薬と塗り薬があります。飲み薬は男性のみ使うことができ自費診療で処方箋が必要です。
最近ではジェネリック医薬品も出てきました。塗り薬は男女それぞれに有効な商品があり、薬局で購入できます。
髪とは
頭皮から出ている「毛幹」の部分と、頭皮の下に隠れている「毛根」の部分からできています。毛幹は一般的に髪といわれている部分で、活動が終わった細胞できており成長することはありません。
毛髪のサイクル
成長期
髪が伸びるのは、毛先が伸びているのではなく、毛根の根元の方にある「毛球」の「毛母細胞」が頭皮の毛細血管から栄養などをもらい、細胞分裂を繰り返して成長し、頭皮の方向へ伸びていきます。そして次第に水分を失い毛幹の組織に変わり、根元の部分から押し上げていくことで髪が伸びているのです。この髪が伸びている期間を成長期と呼び、通常2~6年ほどです。退行期
成長期の後、毛球は細胞分裂を止め髪の成長は止まります。この期間は2週間ほどで退行期と言います。休止期
次に、数ヶ月かけて毛根の長さが短くなり頭皮表面に近づいていきます。その下では新しい毛球が生まれ、その毛球が髪へと成長していく過程で、元の髪は押し出されるようにして抜け落ちます。髪は、毛髪が伸びている「成長期」、毛根が縮んでいく「退行期」、成長が止まる「休止期」の3つの期間を繰り返しています。この流れを「ヘアサイクル」と呼びます。1本1本のヘアサイクルが違うので、抜けるタイミングも異なり、通常一度にまとまって髪が抜け落ちることはありません。
薄毛の原因
ヘアサイクルが乱れて成長期の期間が短くなったり、頭皮の血行が悪くなったりすると、髪が成長して太く長くなる前に抜け落ちて、細く短い髪が多くなり薄毛の状態になります。原因としては、遺伝やストレス、加齢、男性ホルモンの影響などが考えられています。
男性型脱毛症と女性型脱毛症
薄毛は男性と女性とでタイプが異なり、原因も治療も分けて考える必要があります。男性の薄毛は男性型脱毛症「AGA」と呼ばれます。男性ホルモンが原因で、その受容体がある頭頂部や前頂部から薄毛が徐々に広がっていきます。
一方、女性にみられる男性型脱毛症のことを、最近は女性型脱毛症と呼びます。しかし男性型とは異なり、頭頂部から側頭部にかけての広い範囲に、ハリとコシの失われた細く柔らかい髪の毛が多く生えるようになります。ある程度、男性ホルモンの影響があると考えられますが、明確な発症メカニズムはわかっていません。更年期に女性ホルモンが低下することも一つの原因だと考えられます。
女性の薄毛は、ほかにも鉄や亜鉛が欠乏してなる場合や、自己免疫疾患による場合、急激なダイエット、出産などがきっかけで発症する場合があります。皮膚科専門医による注意深い診断が必要です。
薄毛の治療薬
薄毛の治療法は自費診療で処方箋が必要です。男性ホルモンの影響による薄毛の治療薬には、「プロペシア」と「ザガーロ」があります。プロペシアのジェネリック医薬品が「フィナステリド」で、ザガーロのジェネリック医薬品が「デュタステリド」です。この薬は男性にのみ有効で女性が使用することはできません。
薬局などで購入できる塗り薬として「ミノキシジル」があります。男性型、女性型ともに有効です。この薬は、もともと血圧を下げる薬として開発されましたが、体毛が濃くなる副作用があったため、髪に対する作用が研究され、発毛剤として販売されるようになりました。発毛を促す作用は、毛母細胞を促すことで髪が生えてくると考えられています。
ミノキシジルの内服薬を個人輸入するという話をよく耳にします。しかし、日本ではミノキシジルの飲み薬は、脱毛症の治療薬として承認されていません。
いずれの薬も、効果が表れて髪が伸びるまでに数ヶ月程度の時間がかかります。また、根本的に治しているわけではなく、使用を中止すると元の状態に戻ってしまうため、継続して使用する必要があります。
副作用について
基本的に副作用の少ない薬ですが、飲み薬の副作用はいくつか報告されています。主な副作用としては、性欲減退、勃起不全、肝機能障害があります。通院は怠らず、違和感や副作用が出たときは処方元の医師に相談してください。外用薬でも副作用が起こることがあります。それは、外用部位の掻痒感や発疹、皮膚炎などです。これはAGA治療薬に限らず多くの外用薬でみられるものですが、ミノキシジル特有のものとしては血圧低下や動悸といった症状も報告されています。使用中に何らかの体調不良や副作用を感じた時は、一旦使用を中止し専門の医師に相談してみてください。
