
その206(2024年8月号)
- オーバードーズとは何ですか?
- 医薬品の定められた量(Dose)を超えて(Over)、過剰摂取することを意味します。医療用だけでなく市販用の医薬品でも広がりを見せ、近年社会的な問題となっています。
オーバードーズとは
薬物乱用の一つであり、定められた量(Dose)を超えて(Over)服用する事を指します。10~20代の若い世代の女性の増加が顕著で、小学生による事案も発生しています。2022年には薬の過剰服用による救急搬送は1万382人にのぼり、これは20年比で11%増となっていて近年社会的な問題となっています。

オーバードーズの対象となる医薬品例
- 医療用医薬品:向精神薬、咳止め、解熱鎮痛剤など
- 市販薬(OTC):風邪薬、咳止め、鎮静剤、抗アレルギー剤、カフェイン剤など
薬物乱用において比較的手軽に入手しやすい医薬品がゲートウェイドラッグとなり、他の違法薬物や大麻、覚せい剤などのハードドラッグにエスカレートしていく傾向があります。
オーバードーズによる代表的な症状
※使用した薬剤により症状は異なります
- 睡眠薬系:酩酊状態、錯乱状態、昏睡、けいれん発作、呼吸抑制
- 咳止め系:立ちくらみ・めまい、傾眠、吐き気、意識消失、昏睡、呼吸抑制
薬によっては腎臓や肝臓への負担により後遺症を生じる他、依存形成によりオーバードーズを繰り返してしまう中毒症状が出る場合もあります。過去にオーバードーズでの死亡例もあり、一時の快楽の引き換えとして多大なリスクを負う事となります。
オーバードーズの背景
他薬物乱用と同様に、社会的なプレッシャーや心のストレスによる自暴自棄、興味本位といった理由が引き金になるケースが大多数です。また、市販薬でのオーバードーズに限定すると、非行歴のない10~20代女性が特徴的に多いとされています。主には家庭での親との関係性、学校での孤立などが原因であると考えられています。
オーバードーズへの対策
大麻や違法薬物などと比較すると入手しやすい市販薬ですが、オーバードーズなどの薬物乱用事件の増加を受け、現在薬局での販売規制(未成年者購入制限やマイナンバーカード提示等)にむけた法整備が検討されています。まとめ
薬物乱用自体は古くから社会的な問題として存在します。近年問題になっているオーバードーズは、比較的入手しやすい市販薬を乱用していること、使用者の低年齢化が特徴的であり、使用に至る社会的背景は依然として継続しています。市販薬の規制も必要な一手ではありますが、それだけでは別の薬物に移行するだけであり中々根絶は難しいと思われます。まずは薬物使用に至る社会的な孤立を防ぐべく、身近な人への関心・注意を払う事が私たちにできる重要な一手ではないでしょうか。
