今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その211(2025年1月号)
Q
薬局でも禁煙のお薬があると聞いたのですが。
A
市販の禁煙補助薬には、ガム、貼り薬の2種類があります。いずれもニコチンをゆっくり吸収させる事により、禁煙時における喫煙欲求などを抑え、意志だけの禁煙に比べ1.5~2倍に成功率が高まると報告されています。

喫煙による影響

たばこには、ニコチンや一酸化炭素をはじめ約4,000種類の化学物質が含まれ、そのうち約200種類の有害物質が含まれます。喫煙は「防ぎうる病気の原因の最大のもの」と言われ、自分だけでなく他人の健康にも著しい悪影響を与えます。代表的な疾患としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺癌、結核、虚血性心疾患、脳卒中、歯周病、2型糖尿病などなど万病の原因の一つとなっています。

禁煙治療に使える薬の種類と特徴

一般用医薬品(市般薬) 医療用医薬品
・ニコチンガム
・ニコチンパッチ
・ニコチンパッチ
・バレニクリン

ニコチンガム

禁煙による離脱症状(喫煙欲求やイライラ、集中困難など)の原因となるニコチンを、口腔粘膜よりゆっくり吸収させる事により症状を軽減させます。また、ニコチン補充に加え、ガム自体が禁煙による口寂しさを軽減することも期待できます。
パッチ製剤と異なり効果の発現が早いので、急な喫煙欲求などに対応でき、様々な種類の味があるので、変化をつけて使用する事が出来ます。一般的なガムとは使い方が異なるので注意が必要です。むかつき・のどの刺激を生じる事があるので、唾液を飲み込まないようにする必要があります。

使い方

タバコを吸いたくなった時

  1. 1回1個を口中でゆっくり噛む
  2. 頬と歯茎の間に入れてゆっくりニコチンを吸収させる
  3. 約30~60分でガムを捨てる
*喫煙を完全に止めて使用する。
*口中が酸性の時、吸収が悪いので、炭酸飲料・コーヒー・アルコール飲料などと併用しない。

ニコチンパッチ

ニコチンガムの貼付剤バーション。目的は同様ですが、接客業などガムでの治療が難しい方に適しています。また、他人から禁煙していることがわからないのも利点です。
貼付剤なので、皮膚症状への注意が必要で、貼り続けてもよいのですが、逆に細かい調整は困難です。高用量タイプは医療用医薬品にしかありませんので、喫煙本数の多いヘビースモーカーの方であれば、医療用を検討して下さい。

使い方

1日1回1枚を24時間ごとに貼りかえる

*喫煙を完全に止めて使用する。
*皮膚症状を避けるため貼付部位は毎回変える。
*サウナや発汗を伴う激しい運動時は事前にはがす。

バレニクリン

禁煙補助剤の中で唯一の内服薬です。禁煙による離脱症状の緩和に加え、再喫煙による満足感を抑えます。医療用医薬品につき禁煙外来を実施している医療機関で処方してもらう必要があります。めまい、眠気を生じることがあるので、運転などには注意が必要です。
※2022年より異物混入により出荷停止が続いており、現在使用困難な状況が続いています。

使い方

  1. 1~3日目:1日1回、1回0.5mg
  2. 4~7日目:1日2回、1回0.5mg
  3. 8日目以降:1日2回、1回1mg
*喫煙をしながら開始可能です。
*腎機能障害がある方は減量する必要があります。

最後に

健康増進法の施行により喫煙箇所はどんどん狭まり、年々たばこの値段も上昇している今、絶好の禁煙タイミングとも言えます。残念ながら前述の内服薬は出荷の見込みがありませんが、ガム、パッチ剤などご自身の生活スタイルに合ったお薬を選ぶ事で禁煙へのハードルがぐっと下がります。まずはかかりつけ・お近くの薬局でご相談されてみてはいかがでしょうか。