
その212(2025年2月号)
- 消毒用エタノールが効きづらいウイルスがあると聞いたのですが。
- 消毒用エタノールは多くのウイルスや細菌に有効ですが、ノロウイルスやロタウイルスは消毒用エタノールが効きにくい代表的なウイルスです。例年、冬から春先にかけてこれらのウイルスによる胃腸炎が最盛期となるため注意が必要です。
消毒用エタノールについて
新型コロナウイルスの流行により、「除菌」「消毒」といった意識が高まり、生活に広く定着してきました。保湿剤などを添加した速乾性手指消毒薬も、感染対策として日常でよく使用されるようになりました。この消毒用エタノールは、ウイルスを守っている「エンベロープ」という脂質膜を壊して効果を発揮しますが、脂質膜を持っていない「ノンエンベロープ」というウイルスには効果が弱かったり無効となってしまうので注意が必要です。
脂質膜 <ウイルスを守る> | エタノール <脂質膜を壊す> | |
---|---|---|
エンベロープウイルス | ○(ある) | ○(効く) |
ノンエンベロープウイルス | ×(ない) | ×(効きにくい) |

ウイルスの代表例
消毒用エタノールが効くウイルス (エンベロープウイルス) |
消毒用エタノールが効きにくいウイルス (ノンエンベロープウイルス) |
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■代表例 インフルエンザウイルス 新型コロナウイルス など 【補足事項】 インフルエンザの流行期です! 身を守るためには普段の健康管理や予防接種も重要です! |
■代表例 ノロウイルス ロタウイルス など 【補足事項】 例年、冬から春先にかけてノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎が最盛期となるため注意が必要です! |
ノンエンベロープウイルスへの対策
消毒用エタノールが効きにくい「ノンエンベロープウイルス」には、以下の対策が効果的です。石けんと流水による手洗い
石けんと流水による手洗いで、手指に付着しているウイルスを減らすことができます。- 手洗いは最低20秒かけて行う。
- 外出後やトイレの後、食事の前後、咳やくしゃみで手を覆った後など、手洗いのタイミングを意識する。
次亜塩素酸ナトリウム溶液の使用
環境の消毒には、次亜塩素酸ナトリウムを水で薄めて「塩素消毒液」を作ります。家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。濃度によって効果が異なりますので、正しく計りましょう。食器、カーテンなどの消毒や拭き取り 200ppmの濃度の塩素消毒液 | おう吐物などの廃棄 (袋の中で廃棄物を浸す) 1000ppmの濃度の塩素消毒液 | |||
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製品の濃度 | 液の量 | 水の量 | 液の量 | 水の量 |
12% | 5ml | 3L | 25ml | 3L |
6% | 10ml | 3L | 50ml | 3L |
1% | 60ml | 3L | 300ml | 3L |
- 製品ごとに濃度が異なるので、表示をしっかり確認しましょう。
- 次亜塩素酸ナトリウムは使用期限内のものを使用してください。
- おう吐物などの酸性のものに直接原液をかけると、有毒ガスが発生することがありますので、必ず「使用上の注意」をよく確認してから使用してください。
- 消毒液を保管しなければならない場合は、消毒液の入った容器は、誤って飲むことがないように、消毒液であることをはっきりと明記して保管しましょう。
- 次亜塩素酸ナトリウムは、金属製品の腐食やプラスチック・ゴムの劣化を招くため注意して下さい。
次亜塩素酸ナトリウム溶液は強力な消毒剤です。適切な濃度と注意事項を守りましょう!

【参考文献】