
その215(2025年5月号)
- 悪くなった腎臓を元に戻す薬はありますか?
- 元に戻す薬はありませんが、腎臓がこれ以上悪くならないように保護する薬はあります。健康診断などで腎機能低下を指摘されたら、定期的に受診し、処方された薬をきちんと飲み続けることが大切です。
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease :CKD)とは
慢性腎臓病とは、さまざまな原因によって腎臓のはたらきが徐々に低下していく状態のことをいいます。英称のChronic Kidney Diseaseの頭文字をとってCKDと呼ばれています。腎臓は一度機能が低下すると原則回復することが難しく、慢性腎臓病が進行すると透析などが必要な状態になることもあります。また軽度のCKDでも、心臓病や脳卒中などの心血管疾患のリスクを高めることが明らかになっています。日本では約2000万人が該当し、20歳以上の日本人の5人に1人がCKD患者となることから、新たな国民病であると言われています。腎臓のはたらきが低下していると指摘されたら
健康診断では、血液検査でクレアチニンというたんぱく質の濃度を測定し、さらに年齢と性別からeGFRを計算して腎臓の働きを評価します。eGFRは腎臓の働きが「正常に比べておよそ何%か」を表しています。eGFRが60を切っていたり、尿検査で蛋白尿が陽性となるなどから、腎機能の低下を指摘され、受診を指導された場合は必ず受診し治療を続けてください。CKDを進行させないためには
CKDの悪化因子として、1.肥満、2.糖尿病、3.高血圧、4.脂質代謝異常、5.喫煙などがあります。CKDを進行させないためには、食事の塩分を減らす・肥満を予防する・禁煙など生活習慣の改善とともに、血圧・脂質・糖代謝などを総合的にコントロールする必要があります。

CKDの治療薬
腎機能低下をこれ以上進ませないために、下記のような薬が使われます。血圧管理 | 降圧剤、利尿薬 |
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血糖管理 | 糖尿病薬 |
脂質管理 | 高脂血症治療薬 |
尿酸管理 | 高尿酸治療薬 |
全て生活習慣病の治療薬ですが、これらの薬が腎臓を守り、腎機能低下を遅らせることが出来ます。きちんと継続して服用することが大切です。
さらに腎機能低下が進行すると、
貧血管理 | 貧血治療薬 |
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ミネラル管理 | カルシウム、リンを調節する薬 |
老廃物管理 | 経口吸着薬 |
CKDの方が薬の服用で注意すること
腎機能が低下している方が腎臓で排泄する薬を飲むと、体内からの排泄が遅くなることで血中濃度が高くなり、副作用が起こりやすくなることがあります。その場合は薬の量や飲む回数を減らす必要があります。また、薬の種類によっては急激な腎機能低下を招くことがあり注意が必要です。特に多くの解熱鎮痛剤は、痛みを止める作用だけではなく、腎臓の血流を悪くする可能性もあります。CKD患者さんが長い間安全に使用できる解熱鎮痛薬はありません。漫然と続けず、必要最少量を使用するようにしましょう。
どの医療機関を受診する際も、ご自分がCKD患者であることを伝えて下さい。薬を安全に使用するためにもぜひお薬手帳をご活用ください。また一部の市販薬・サプリメントには腎機能を悪化させる可能性があるものがあり、注意が必要です。利用にあたっては、医師・薬剤師に相談しましょう。
CKDシールってご存知ですか?
CKDシールとは腎機能が低下した方が、複数の医療機関にかかる際や薬局で薬を受け取る際に、腎機能に配慮された適切な薬を受け取ることを目的として、お薬手帳の表紙に貼付されるシールです。松本地区では2023年4月より貼付が開始されました。
CKD患者さんが適切な医療を受けるためには、関係する医療関係者みんなでその方の腎機能を共有することが大切です。お薬手帳にCKDシールを貼ることを提案されたら、ぜひご協力をお願いします。
CKD患者さんが適切な医療を受けるためには、関係する医療関係者みんなでその方の腎機能を共有することが大切です。お薬手帳にCKDシールを貼ることを提案されたら、ぜひご協力をお願いします。

まとめ
- 腎臓の機能低下を遅らせるためには、生活習慣の改善と、必要な薬を継続することが重要です。医師・薬剤師といっしょに、薬と上手に付き合っていきましょう。
- 医療機関を受診する際は腎機能が低下していることを必ず伝えましょう。
- 市販薬やサプリメントにも注意が必要です。
