今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その162(2020年12月号)
Q
耳鳴りに悩まされています。何か良い薬はありますか?
A
耳鳴りの原因は様々で、市販薬での対応は難しいのが現状です。
日常生活に支障が出るようでしたら、耳鼻科や脳外科など専門の医療機関で診察を受けてください。

はじめに

みなさんは耳鳴りの症状が出たことがありますか。何かのきっかけに一時的に耳の中で「キーン」という音が聞こえた経験のある方は多いかと思います。コンサートや音楽ライヴなどスピーカーからの大音量で数日耳鳴りが残る場合や、サッカーでヘディングした後、ラグビーやアメリカフットボール、柔道などでのボディーコンタクト、野球での頭部デッドボール、転倒して頭部打撲、交通事故などの外的要因でも耳鳴りが起きることがあります。
以前は耳鳴りの症状に悩まされる方の多くは高齢者が占めていましたが、近年では若年層でも耳鳴りの症状が出て日常生活に支障をきたすケースも増えています。

耳鳴りの原因

一過性の耳鳴り

何をしたわけではないが、急に耳の中で「キーン」「ジー」と耳鳴りが起きることがあります。多くがすぐに改善して聞こえなくなります。詳しい原因は不明ですが、血液の流れなどが一因とされています。

原因不明

一過性の耳鳴りとは異なりすぐには改善されず、ずっと耳鳴りが続き不眠や難聴、めまいなどを引き起こすことがあります。メニエール病や血圧の値などが影響していることがありますが、疲労が重なることにより発症することもあります。また、ストレスなどメンタル的なこともあり、原因を特定することはなかなか難しいのが現状です。

加齢

年齢が高くなるに伴い体の機能も低下していきます。加齢によって耳が遠くなり様々な音が聞こえづらくなります。耳から得られた音を脳へ伝えるある種の信号量が減少してしまうからです。そうなることで、難聴、耳鳴りの症状が鮮明になってきます。

大きな音量

音楽ライヴやコンサートなどで大音量を聞いた後、数日にわたり耳鳴りに見舞われることがあります。また風船が割れた音、飛行機に乗った後のエンジン音、道路工事や建設工事、農作業機による作業音など、大きな音を聞くことが耳鳴りの原因として一番多く挙げられます。更にはくしゃみの後にも耳鳴りの症状が出ることもあります。近年スマートフォンや携帯型音楽プレーヤーの普及により、機密性の高いイヤホンやヘッドホンで音楽を聴き続けることでも聴覚に負担がかかり耳鳴りの原因となります。その多くは自然に改善しますが、鼓膜の炎症や、鼓膜自体に傷がついて症状が長引くこともあります。


薬剤

薬を服用している方の中で、ごくまれではありますがその薬の働き、副作用によって耳鳴りが引き起こされることがあります。どの薬だから耳鳴りが起きるということではなく、体調や併用薬、病気の種類などいくつかの要因が重なって起きると考えられます。

病気によるもの

アレルギー性鼻炎や中耳炎・外耳炎、鼻がつまるような風邪症状のあとにも耳鳴りが起きることがあります。鼻の炎症と中耳、外耳などの炎症が原因と思われます。

耳垢

耳垢を掃除した時に耳の内部に傷をつけて耳鳴りの症状を引き起こす場合もあります。また耳垢自体が耳鳴りの原因となることもあります。

耳鳴りの治療薬

市販薬

耳鳴りに対応する市販薬が幾つか販売されています。ニコチン酸アミド、パパベリン塩酸塩を主成分とする医薬品。当帰芍薬散、令桂朮甘湯、八味地黄丸などに代表される漢方薬。ビタミン剤を主成分とする血行改善・促進作用の薬。などなどの医薬品があります。耳鳴りの症状、状態は人により異なりますので、購入の際は薬剤師にご相談下さい。
ただし、お医者さんから処方される医療用医薬品は処方せん無しでは購入することはできません。症状が続く、市販薬でも改善しないようであれば、かかりつけのお医者さん、耳鼻咽喉科、脳神経外科などで診察・検査を受けましょう。
その他機能性表示食品やサプリメント、健康食品など多くが販売されていますが、薬を服用中の方にとっては思わぬ副作用が出ることがありますので、まずはかかりつけのお医者さんや薬剤師に確認してみてください。

最後に

耳鳴りについて、インターネットで検索をすると多くの民間療法が紹介されていますが、根拠のない情報も多くあります。症状が長引く、繰り返し起こる、不眠や難聴など日常生活に支障が出るようであれば、耳鼻咽喉科や脳神経外科などへ早期に受診することをお勧めします。