今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その190(2023年4月号)
Q
新型コロナウイルスに効く飲み薬はありますか?
A
現在わが国において、新型コロナウイルス治療目的で承認されている飲み薬(経口抗ウイルス薬)は3種類あります。
いずれも発症してから3~5日以内の服用が必要となりますので、医療機関に受診する際は早めの対応を心がけてください。

新型コロナウイルス感染症に効く飲み薬(経口抗ウイルス薬)とは

発症初期のウイルス増殖・拡散を防ぐことにより、症状の進行を抑制する目的で用いられます。そのため発症から時間が経過した状態(発症後6日以上)で服用しても、十分な効果が期待できません。
特例承認により緊急的に認可された医薬品なので、使用にあたり医療機関において同意説明文書による同意確認が必要となります。

新型コロナウイルス感染症経口抗ウイルス薬の種類

ラゲブリオ®(モルヌピラビル)
対象
基本条件:投与の時点で発症日から5日以内かつ18歳以上
部分条件:いずれかの重症化リスク因子*を有する
投与禁止項目
妊婦又は妊娠している可能性がある者。18歳未満。
注意事項
一般流通(どの薬局でも取り扱い可能)
用法・用量
1日2回 1回4カプセルを5日間
薬価
2,357.8円/カプセル ⇒ 94,312円/5日間

パキロビッド®(ニルマトレルビル/リトナビル)
対象
基本条件:投与の時点で発症日から5日以内、かつ成人または12歳以上で体重40kg以上の小児
部分条件:いずれかの重症化リスク因子*を有する
投与禁止項目
妊婦又は妊娠している可能性がある者。肝・腎臓に障害がある人でコルヒチンを使用している者。併用薬によっては使用禁止。
注意事項
処方可能医療機関・薬局が限られる
用法・用量
1日2回 1回ニルマトレルビル2錠、リトナビル1錠を5日間
薬価
300 1シート 12,538.6円/シート ⇒ 62,693円/5日間
600 1シート 19,805.5円/シート ⇒ 99,027.5円/5日間

ゾコーバ®(エンシトレルビルフマル酸)
対象
基本条件:発症から3日以内かつ12歳以上
部分条件:なし(軽症例での使用可)
投与禁止項目
妊婦又は妊娠している可能性がある者。肝・腎臓に障害がある人でコルヒチンを使用している者。併用薬によっては使用禁止。
注意事項
処方可能医療機関・薬局が限られる
用法・用量
1日目は375mgを、2日目から5日目は125mgを1日1回経口投与する。
薬価
7,407.4円/錠 ⇒ 51,851.8円/5日間
*重症化リスク因子

  • 60歳以上
  • BMI:25kg/㎡超
  • 喫煙者(過去30日以内の喫煙があり、かつ生涯に100本以上の喫煙がある)
  • 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
  • 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
  • 高血圧の診断を受けている
  • 心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頸動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)
  • 1型または2型糖尿病
  • 限局性皮膚がんを除く活動性の癌
  • 慢性腎臓病
  • 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
  • 医療技術への依存(SARS-CoV-2による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)、等

参照

「COVID-19に対する薬物治療の考え方第15版」(2022年11月22日)(日本感染症学会)

まとめ

執筆時点(2023年3月)では上記取り扱いとなりますが、ラゲブリオ同様に他薬剤もいずれは一般流通される方向で進んでいます。また、今後の新型コロナウイルス感染症の5類以降に伴い、各情報が流動的であることをお含み頂けると幸いです。