今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その194(2023年8月号)
Q
夏の冷え性に良いお薬はありますか?
A
夏でも冷え性でお悩みの方は多いかと思います。市販では血行改善作用のあるビタミン剤や生薬・漢方由来のお薬があります。
一度お近くの薬局・薬剤師にご相談下さい。

はじめに

冷え性といえば冬場の症状と思われる方が多いのではないでしょうか。実は夏場でも冷え性にお悩みの方が多くいらっしゃいます。また冷え性は女性特有のものではなく、男性も同じように症状が出る方がいます。冷え性対策として生活環境への一工夫や、日常生活における注意点、グッズを用いたアドバイスなど様々ありますが、今回は夏の冷え性に効果のある、薬局で購入できる代表的なお薬を紹介します。

冷え性の原因

冷え性の原因として考えられるのは、血行障害と呼ばれる血液の流れの悪さが挙げられます。全身をめぐる血液が、何らかの原因で手足の末端へ供給が滞り、指先、足先が冷え切ってしまいます。元々女性に症状が多いというのは、男性に比べ筋肉量が少なく脂肪が多いことが一因です。脂肪は温度の変化に対応するのが苦手で、一度冷えたらなかなか温まらない性質を持っています。その他、加齢やホルモンバランスの乱れ、怪我や手術の後の影響、糖尿病などの病気によって血行が悪くなることもあります。更に寒暖差の大きい生活環境や日常生活におけるストレスなども原因と考えられます。

薬局で購入できるお薬

薬用酒

冷え性対策として最もポピュラーなものとして薬用酒があります。基本的には体の働きを改善させるために効果のある生薬を、いくつか配合したアルコール含有のお薬です。多くの薬用酒には「滋養強壮」「肉体疲労」「冷え性」などに効果があると記載されています。ご自身の症状、目的に合わせてお選び下さい。
一般的に薬用酒に似たものとして健康酒があります。薬用酒は医薬品としての指定を受けていますので効能・効果を明記することが出来ます。健康酒は医薬品指定がされていないアルコール飲料なので、効能・効果の記載は基本的にできません。飲みやすさを優先したものとして、ご自身の判断、好みに応じてお求め下さい。
薬用酒に関してはいくつかの注意点があります。薬用酒というだけあってアルコールを含みます。20歳未満の方は服用できません。また飲酒運転の原因になりますので、運転前の服用もできません。さらにアルコールが苦手な方やアルコールに過敏な方、病気でアルコール摂取を制限されている方も控えた方が良いでしょう。

総合ビタミン剤

市販の総合ビタミン剤でも冷え性に効果のあるお薬があります。特にビタミンEやビタミンB群(B1、B2、B6、B12)を含む総合ビタミン剤には冷え性への効果が期待できます。肉体疲労時の栄養補給の為に、複数のメーカーから多くの製品が販売されています。医薬品や医薬部外品、錠剤や散剤、ドリンクタイプのものまで様々です。ご自身の用途に応じてお選び下さい。

総合婦人薬~女性保健薬

女性特有の更年期障害などに効果のある女性保健薬というお薬も販売されています。数種類の生薬に加えビタミン類やカルシウムなども含まれるお薬です。女性ホルモンのバランスを整え、自律神経を改善させる働きや血行改善、滋養強壮などの効果が期待できます。この後にお話しする「3大婦人薬」の成分がいくつか含まれています。こちらも多くのメーカーから複数の製品が販売されていますので薬剤師とご相談のうえお買い求め下さい。

漢方薬

最後に「3大婦人薬」と呼ばれている漢方薬を紹介します。
これらの漢方薬は市販薬として販売されています。同じような働きがありますが、それぞれに特徴があります。薬局・薬剤師にご相談いただき、目的別、症状にあった漢方薬をお選び下さい。
当帰芍薬散
比較的体力が低下した人の貧血、四肢の冷感、軽度浮腫、腹痛などに用いるとされています。一般的に全身倦怠感、疲労感、月経異常、下腹部痛、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、腰痛、心悸亢進などに用います。
【成分として含まれる生薬】
トウキ、センキュウ、シャクヤク、ブクリョウ、ソウジュツ、タクシャ
加味逍遙散
自律神経・内分泌などの乱れによる機能失調症、特に婦人科領域での神経症状を伴う諸症状に用いるとされています。一般的に疲労感、下半身の冷え感、肩こりや頭痛、動機、めまい、不安や不眠、月経異常、閉経期などに用いられます。
【成分として含まれる生薬】
サイコ、シャクヤク、トウキ、ブクリョウ、ソウジュツ、サンシシ、ボタンピ、カンゾウ、ショウキョウ、ハッカ
桂枝茯苓丸
比較的体力のある方で、のぼせ感を有する諸症状に用いるとされています。 一般的に、頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、下腹部痛、下肢の冷感、月経異常や不正出血などに用います。
【成分として含まれる生薬】
ケイヒ、シャクヤク、トウニン、ブクリョウ、ボタンピ

これ以外にも冷え性対策として様々な漢方薬が市販されています。漢方薬を多く取り扱っている薬局もありますので、是非一度ご相談下さい。

最後に

今回は、冷え性対策として効果のある代表的な市販薬を紹介しました。それぞれ短期的な服用ではなかなか効果を得ることが難しく、長期的に継続した服用が必要になります。“もともと冷え性なので、何をやっても効果がない”と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、冷え性対策としてのお薬がいくつかありますので、少しでも症状を改善させるためにご活用下さい。

なお冷え性によって、不眠など日常生活に支障が出る、痛みなどを伴うような症状がある場合は、何らかの疾患の影響ということも考えられます。かかりつけ医やお近くの医院、クリニックで受診することをお勧めします。