今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その197(2023年11月号)
Q
お薬が不足していると聞いたのですが。
A
解熱剤、咳止めなどの風邪薬などで不足が起こりやすい状況が続いています。コロナの流行が直接的な原因の1つです。また、物価高騰、国際情勢の不安定化も、お薬の原材料が手に入りづらくなっていることに影響しています。

医薬品不足の背景

昨今、お薬の供給不安定がメディアなどで取り上げられるようになってきました。薬局でお薬をもらう時に「薬がない」と断られた方もいらっしゃると思います。なぜこのような状況になってしまったのでしょうか?
背景には短期的な要因と長期的な要因があります。短期的要因が緩和しつつある現在ですが、長期的要因はむしろ悪化しています。解決のためには政府、患者、医療者、メーカーをはじめとする国民全員が、力を合わせて協力しなければいけません。

短期的な要因

短期的な要因は大きく2つあります。「コロナ禍」と「医薬品品質問題」です。急激な医薬品不足は主にこの2つが引き起こしました。

コロナ禍

2019年末から世界的に新型コロナウイルスの流行が始まりました。高い感染性から多くの方が罹患し、風邪薬が不足する事態に陥りました。咳止め、痰切り、解熱剤などが足りなくなりました。2023年現在も流行のたびに不足が繰り返されています。

医薬品品質問題

2020年12月に発生した医薬品の品質問題です。小林化工の医薬品に睡眠薬が混入したことで多くの方が被害を受けました※1。この事件の影響で、他の企業にも調査が及びました。後発品大手である「日医工」にも品質問題があることがわかり、2021年3月より問題の工場が操業停止命令を受けました※2。その結果、多くの医薬品が不足する事態に陥りました。

長期的な要因

長期的な要因は物価高騰※3と医療費抑制政策※4です。2つの要因により、採算が取れない医薬品が増えています※5。医薬品メーカーも採算が取れない医薬品を積極的に製造するのは困難です。

物価高騰

「世界的なインフレ」が続いています。皆さんも日常生活の中で物価高騰の影響を感じていることと思います。医薬品の原材料価格も高騰し、医薬メーカーの収益を圧迫しています。

医療費抑制政策

高齢化により増大する医療費を抑制するため、政府は薬の価格を毎年改定しています※6。薬の値段が毎年安くなることは医薬品製造、流通に携わる多くの企業の収益を圧迫します。


医薬品供給問題はメーカー単独の努力で乗り越えられません。政府、メーカー、医療関係者、患者をはじめとする国民全員が一丸となって取り組むべき問題です。

薬局の取り組み

日本全国の薬局は医薬品安定供給のために、日々奮闘しています。処方箋を発行する医療機関や薬局同士の連携、患者さんの協力を得ながらなんとかやりくりしています。苦しい状況が続きますが、皆さんのお力添えにより医薬品供給は支えられています。ご不便をおかけしますが、引き続きご協力をお願いします。

医療機関同士の連携

処方された薬が薬局で手に入らない場合、近隣の薬局から調達をして対応しています。在庫がある別の薬局を紹介する場合もあります。また、どうしても薬の入手が困難な場合は、医師と相談して同じ効果の別の薬に変えてもらう場合もあります。

患者さんとの協力

普段使っている医薬品のメーカー変更や、先発医薬品とジェネリック医薬品の変更などで対応してもらうことがあります。普段使い慣れている薬が変わることはとても不安だと思いますが、ご理解、ご協力をお願いします。