今月のくすり問答

薬の飲み方Q&A
その200(2024年2月号)
Q
市販の頭痛薬を飲み続けて大丈夫でしょうか?
A
痛み止めの飲み過ぎで、逆に頭痛を誘発する薬物乱用頭痛を起こすことがあるので、注意が必要です。
頻回の頭痛に悩まれている方は、頭痛外来等の受診をお勧めします。

日本人の頭痛の有病率

日本における頭痛の有病率は、片頭痛が人口の5~10%、緊張型頭痛が人口の約20%であることが最近の疫学調査で報告されています。すなわち、国民の4人に1人が頭痛に悩んでいるということになり、QOL(日常生活の質)の低下ともに、頭痛による生産性の低下により毎年多大な経済的損失が日本経済にもたらされていると言われています。

鎮痛薬の過度な服用による頭痛

つらい頭痛の対処法として、5割以上の方が「鎮痛薬を服用する」と答えています。そのような中、近年、鎮痛薬の過度な服用が原因で起きる頭痛が問題となってきています。
薬物乱用頭痛(medication-overuse headache:MOH)」と呼ばれていますが、世界的にも問題視されており、「健康でいる期間が縮むリスクの大きい脳神経疾患」を示したWHO(世界保健機関)の調査(2015年)でも、ワースト6位になっています。

薬物乱用頭痛とは

緊張型頭痛や片頭痛などを抱える人が、頭痛の治療薬(市販薬、鎮痛薬、トリプタン・エルゴタミンン製剤など)を定期的に服用していると、次第に薬が効かなくなってきて、ついには薬を飲むと頭痛が誘発されるという事態に陥ることがあります。日本頭痛学会の「慢性頭痛治療ガイドライン」によると、薬物乱用頭痛は痛み止めを毎週2~3日以上といったように長期的に服用することで生じるとされています。

  • もともと片頭痛や緊張型頭痛などの頭痛がある
  • 1か月に15日以上の頭痛がある
  • 痛み止めの薬や片頭痛の治療薬を1か月に10日以上のむ状態が3か月を超えて続いている

これらのチェックに当てはまる場合は、薬の使い過ぎによる頭痛への注意が必要です。ほかにも、効果があまりないのに頭痛薬を飲み続けている人や、習慣的に飲んでいる方も該当する場合があります。

薬物乱用頭痛の原因

薬を使い過ぎると、脳など中枢神経での痛みの感受性が変化するために、痛みに敏感になり、その結果、弱い痛みを強い痛みと感じるようになり、頭痛の頻度が増えると考えられています。また、痛みの性質や痛みの部位が変化するなど、頭痛が複雑化して、次第に薬が効きにくくなっていきます。そうなると、さらに薬を使う回数や量が増えていき、悪循環が繰り返されてしまいます。
特に片頭痛は症状が重いことが多く、なるべく頭痛が起きる前に緩和したいと考えて薬を予防的に服用するケースがありますが、こうした服用を続けている場合は要注意です。

薬物乱用頭痛の治療

薬物乱用頭痛かも知れないと思ったら、まずは医療機関を受診することが大切です。脳神経外科や脳神経内科のほか、頭痛外来などが対象となります。その際、服用している薬や頭痛の状況を記録して持参すると有効です。日本頭痛学会のHPからダウンロードできる「頭痛ダイアリー」等を活用しましょう。
治療は、原因薬物の中止、薬剤中止後に起こる頭痛への対処、予防薬投与などが行われ、医師の指導のもとで、痛み止めの薬を使わないための工夫をしながら、頭痛をコントロールしていきます。生活のリズムを整え、こまめに休息し、姿勢の改善や運動不足の解消等の日常生活の見直しも図ります。

おわりに

繰り返す頭痛は本当につらいものです。痛み止めを過度に服用すると、薬物乱用頭痛とともに、腎臓や消化器への影響も心配です。市販の痛み止めに頼り過ぎず、前述のチェックリストに心当たりがある方は、ぜひ医療機関の受診をおすすめします。

【参考文献】
  • 日本頭痛学会「慢性頭痛治療ガイドライン」
  • 日本神経学会「頭痛の診療ガイドライン」
  • 第一三共ヘルスケア調査
  • NHK健康チャンネル「頭痛」